政府の総合経済対策とは

 政府は2023年11月2日、閣議決定した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」について説明しました。

総合経済対策とは、政府が景気回復を目指して発表する政策の総称です。 補正予算だけでなく、税制や制度・規制改革などを網羅した総合的な経済政策のことを指します。国と地方自治体、および民間投資を総合した本事業の規模は約37.4兆円程度、 減税を裏付けるための補正予算を含めて17兆円台前半になる見通しです。

今回の総合経済対策では、「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への変革のためのスタートダッシュとして、以下の5本の柱をもとに取組を実行します。

  1. 物価⾼から国⺠を守る(財政支出:6.3兆円程度)
  2. 持続的な賃上げと所得向上(財政支出:3.0兆円程度)
  3. 供給⼒強化・投資促進(財政支出:4.7兆円程度)
  4. ⼈⼝減少を乗り越え変化を⼒に(財政支出:1.6兆円程度)
  5. 安全・安⼼の確保(財政支出:6.1兆円程度)

中小企業に役立つ制度の紹介

 本記事では第2の柱である「持続的な賃上げと所得向上」を実現するための対策の中から、さらに下記画像の3つの手法に分け、中小企業に役立つ制度をピックアップして紹介します。

「デフレ完全脱却のための総合経済対策」のうち中小企業に役立つ制度を抜粋(内閣府の資料をもとに作成https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html

手法①中堅・中小企業の賃上げの環境整備

 構造的・持続的な賃上げを実現するため、賃上げ促進税制の強化します。 2023年の春季労使交渉の賃上げ率は3年ぶりの高水準となったものの、業績の改善がみられない中で賃上げに踏み切った中小企業も存在すると指摘しました。

そこで、中堅・中⼩企業を対象とした繰越控除措置を創設するとともに、 税制措置の延⻑期間の⻑期化(※現⾏制度は2023年度末まで)の検討をするといいます。

さらに厚労省の所管である「くるみん」「えるぼし」※と連携し、仕事と⼦育ての両⽴や⼥性活躍⽀援に 積極的な企業に対して税額控除の上乗せ措置の創設を検討しています。
※くるみん:仕事と⼦育ての両⽴サポート、多様な労働条件・環境整備等に積極的に取り組む企業に対する認定制度。
※えるぼし:⼥性の活躍推進に関する状況や取組等が優良な企業に対する認定制度。

 また中小企業が賃上げのための資金を確保できるよう、原材料費・エネルギーコスト上昇分の全額転嫁を目指し、 価格転嫁対策を推進するとしています。そのために内閣官房と公正取引委員会により、労務費の適切な転嫁のための 価格交渉に関する指針を 2023 年内に策定する予定です。

指針には、発注者側は転嫁に関する取組方針を経営トップの関与の下に決定・運用するとともに、 受注者側との定期的な協議の場を設けること、また、受注者側が準備する根拠資料は、その負担とならないよう、 賃上げに関する公表資料を用いることを盛り込む予定です。

手法②人手不足対応、生産性向上を通じた賃上げ継続の支援

 人手不足に悩む中小企業・小規模事業者のため、政府は省人化・省力化に向けて補助金で支援する予定です。

介護、飲食、宿泊といったサービス業や製造業など幅広い業種を対象とします。 旅館での清掃や飲食店での配膳、製造工場での加工・検査に用いるロボットの導入などへの補助金の支給を想定 しています。補助金を活用できる事項を政府側がカタログ形式で示し、申請手続きを簡素にする見込みです。

また、中堅・中⼩企業の⼯場等の新設や⼤規模な設備投資の新たな支援措置を実施し、地⽅における賃上げに つなげていきます。

省力化投資・大規模成長投資の⽀援イメージ(内閣府の資料から https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html

 その他、後継者不在の中小企業等に対し事業承継税制※について、特例承継計画の提出期限の延長を検討しています。
※事業承継税制とは 一定の要件などを満たした場合、後継者が贈与または相続などで取得した株式などにかかる 贈与税・相続税の納税を猶予し、その後、先代経営者の死亡などで猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

手法③円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化

 ⾜元の円安環境を活かし中⼩企業の製品・サービスの輸出を拡⼤していきます。成長する世界市場を取り込み、 地⽅における賃上げの原資確保や所得拡⼤につなげていきます。

そのために、2022年にスタートした新たに輸出に取り組む1万者の⽀援が目標の新規輸出1万者支援プログラムを 続行します。

具体的には、全国の商工会・商工会議所等の協力を得て更なる普及を図り、専門家による相談対応を行うとともに、 輸出向け製品に必要な設備導入を引き続き支援します。

また新たに、海外でのショールームを設置する(北⽶・欧州・アジアなど5ヶ所)ほか、 海外ECサイトと提携した販路開拓等(東欧・中東・中南⽶など)の支援を強化していく予定です。

新規輸出1万者支援プログラムの概要(経済産業省の公式サイトから https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221216001/20221216001.html

また、観光業の支援として地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業を継続する予定です。

この事業では、観光地経営のマスタープランとなる地域計画の構築・磨き上げ、および宿泊施設・観光施設の改修、 廃屋の撤去、面的DXなど、地域・産業の「稼ぐ力」を回復・強化するための取組を支援していきます。

令和5年度の支援内容・補助金額(観光庁の公式サイトから https://kankosaisei-chiiki.net/

まとめ

今回紹介した経済対策の3つの手法から、補助金や税制措置を存分に活用していくことで、「持続的な賃上げと所得向上」の実現に近づけることができます。

事業における課題を解決するためには、どのような制度を活用できるか現在の段階で確認しておくことをおすすめします。

他の記事では、今回紹介した省人化・省力化に関する支援の導入事例や、現在受給可能な補助金に関する記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!