1兆円を超える予算規模で大注目の事業再構築補助金。メインの「一般型」では、補助額6,000万円、補助率2/3という大きな補助を得て新規事業に挑戦できます。

 とはいえ、投資額の1/3程度は自己負担が必要なのも事実。経営者としては、「もう少し負担を軽くしたい」「何か併用できる支援制度が欲しい」と考えるのは自然なことでしょう。

 実は、この悩みを解決する制度があるのです。補助金で負担を減らすのではなく、「節税」によってコストを削減できるお得な制度。それが、「先端設備等導入計画」「経営力向上計画」です。

 それでは、この2つの制度を詳しくご紹介します。

「先端設備等導入計画」とは

 中小企業が「設備投資を通じて生産性を向上させる計画」を策定し、市区町村の認定を受けることで、税制などの支援措置を受けられる制度です。

①支援措置の内容

 先端設備等導入計画の目玉は、何といっても「固定資産税の軽減措置」でしょう。策定した計画の実行に伴って導入する設備・事業用家屋等の固定資産税を最大で3年間ゼロにできます。固定資産税の標準税率は概ね1.4%。設備投資の金額が大きくなればなるほど、固定資産税は高額となるため、先端設備等導入計画の節税効果も高まります。

 経営では「売上」に注目しがちですが、「節税」の効果も侮れません。20万円を節税できた場合、それは利益率20%の企業が100万円の売上で得る利益と同額です。先端設備等導入計画を活用すれば、売上増加と同じ利益を苦労せずに獲得できます。

 しかも、固定資産税は黒字・赤字に関係なく課せられる税金。固定資産税の軽減は、すべての企業がメリットを享受できます。この他にも、資金繰り支援や補助金の優先採択といった特典もあるのですから、この制度を使わない手はありませんよね。

②申請手続き

 このように大きなメリットがあるため、「認定を受けるのは難しいんでしょ?」と思われがちなこの制度。実はそんなに難しくはありません。先端設備等導入計画の記載内容は、事業再構築補助金の事業計画書があれば、部分的なコピー&ペーストで概ね完成させられます。

 また、先端設備等導入計画の申請には、外部機関から2つの書類を入手する必要があります。それが、「工業会証明書」「経営革新等支援機関確認書」です。計画を認定する市区町村は、設備にも経営にも精通していません。そのため、これらの書類で計画の妥当性を担保する仕組みとなっています。

 工業会証明書は、導入する設備について、第三者機関である工業会が「先端設備の要件に該当する新しくて性能の良い設備ですよ」と証明する書類です。これはメーカーや商社に取り寄せを依頼しましょう。特注品でない既製品でしたら大半の設備が対象になります。逆に、工業会証明書を取れない場合、価格が決められた基準(機械装置の場合は160万円)よりも低い場合は、支援措置を受けられませんので、最初にここを確認しておきましょう。

 経営革新等支援機関確認書は、先端設備等導入計画の内容について認定支援機関が「生産性を高められる良い計画ですよ」と確認したことを証する書類です。この書類は、事業再構築補助金で確認書を発行してもらう認定支援機関に依頼すると話が早いでしょう。なぜなら、この先端設備等導入計画の確認書に記載する内容は、事業再構築補助金の確認書の内容を概ねそのまま流用できるからです。

出典:中小企業庁 【中小企業等経営強化法】先端設備等導入計画について

「経営力向上計画」とは

 中小企業が設備投資・人材育成・コスト管理等を通じて「自社の経営力を向上させる計画」を策定し、国の認定を受けることで、税制などの支援措置を受けられる制度です。

①支援措置の内容

 経営力向上計画の目玉は、「即時償却」「法人税の税額控除」です。これはいずれか一方を選択して活用できます。

 即時償却は、複数年に渡って費用に計上すべき設備投資の費用を、初年度に全額費用(損金)計上できる制度です。翌年度以降の費用計上がなくなるため、トータルでの費用は同額となるものの、設備導入年度の法人税額を下げられるので、当面のキャッシュに余裕を持たせることができます。なお、即時償却までは必要ないという場合は、50%や70%など、任意の償却額を設定することも可能です。

 法人税の税額控除は、支払う必要のある法人税額から、一定の金額を控除できる制度です。控除できる金額は、設備投資の取得価格の最大10%(資本金 3,000万円超1億円以下の法人は7%)となります。設備の金額が高額であればあるほど、大きな節税が可能です。即時償却はあくまでも費用計上の前倒しですが、税額控除は純粋に節税効果を得られるため、キャッシュに余裕があればこちらがオススメです。

②申請手続き

 先端設備等導入計画との大きな違いは、取り組みの内容があらかじめ決まっている点です。申請する計画の事業分野・企業の規模によって、経営力を向上させるための取り組みのリストがあり、その中から自社にマッチするものを選択する方式になっています。

 製造業で例をあげると、「多能工化及び機械の多台持ちの推進」「暗黙知の形式知化」「設備投資」などが、取り組みのリストに候補として記載されています。このような形式であるため、事業再構築補助金の事業計画書を単純にコピー&ペーストするだけでは、計画書の完成は難しいでしょう。とはいえ、計画書に記載する自社の概要や経営状況、市場や競合の動向などは流用できますので、計画書の大部分は埋められます。

 なお、経営力向上計画においても、税制の支援措置を受けるためには、導入する設備について「工業会証明書」の取得が必要です。ただし、経営力向上計画の場合には、工業会証明書がなくても申請できるスキームがあります。

 それが、「B類型」と呼ばれるものです。これは、「公認会計士又は税理士の支援を受けて経済産業局の認定を受ける」という特殊なパターンです。節税額が小さければ、手間の方が大きくなる可能性がありますが、設備投資額が大きい場合は節税額も大きくなります。多少の手間を掛けてでも、利用しない手はありませんね。

 なお、先端設備等導入計画・経営力向上計画の併用は可能であり、原則として設備の導入までに認定を受けることが必要です。申請する場合には、設備の発注後から早めに準備を進めると良いでしょう。

出典:中小企業庁 経営力向上計画策定の手引き

まとめ

 いかがでしたか?事業再構築補助金と先端設備等導入計画・経営力向上計画はとても相性が良く、併用することで新規事業のコストを最小化できます。また、それぞれの申請に必要な計画書の記載内容には共通点が多く、作成の手間や時間を削減できます。せっかくのお得な制度ですので、ぜひご活用されてはいかがでしょうか?

 とはいえ、「自身で作成するには不安がある」「忙しくて手が回らない」という場合もあると思います。そんな時は、事業再構築補助金の支援を依頼するコンサルタントにご相談されるのも選択肢の一つです。多少の費用はかかっても、それ以上のコスト削減効果が得られる場合は、積極的なご活用をおすすめします。

中小企業診断士 児山

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