コロナ禍からのV字回復を応援する事業再構築補助金。ほとんどの業種で活用できる補助金であるものの、業種による採択率の振れ幅は大きく、通りやすい事例とそうでない事例があります。
 では、「事業再構築補助金に通りやすい事例」とはどの様なものでしょうか?それを把握できれば、通る可能性の高い事業計画書を作成するうえで、重要なヒントになるはずです。
 それでは、事業再構築補助金にどんな事例が通りやすいのかをご紹介していきます。

通りやすい業種

 最初に気になるのは、「業種によって通りやすさは変わるのか?」という点ですよね。結論からお伝えすると、業種によって変わります。実際に、業種によって採択率に最大で約2.5倍の差があることが確認されました。

 下表は、第1回公募の結果(全類型の合計)について、業種別の応募・採択件数と採択率をまとめたものです。全体の採択率は36.1%という中で、「製造業」の採択率は49.3%という高い数字。2件に1件は通るということですね。さらに、「宿泊、飲食サービス業」も43.7%という高い数字で続きます。他方、「不動産業、物品賃貸業」は、僅か19.4%。これは極めて厳しい数字ですね。

 ところで、通りやすい業種には、どのような理由があるのでしょうか?上位2業種についてご説明してきます。
 まず「製造業」ですが、業種の特性上、製品の仕様や品質、製造コストなどを定量的に表せます。そのため、事業計画に「具体性の高い差別化の内容」「定量的な成果」の記載が可能となり、高い評価を得られやすくなるのが特徴です。
 加えて、製造業には「ものづくり補助金」という設備投資に活用できる補助金が浸透しています。この影響で、「コンサルタントに事業計画書の作成を依頼する習慣」が根付いており、事業再構築補助金でも多くの事業者がコンサルタントを活用したことも、採択率の高さの一因と考えられます。
 次に「宿泊、飲食サービス業」ですが、こちらは採択率が55.3%と高かった緊急事態宣言特別枠が大きく影響しています。新型コロナで特に苦境に立っている業種であり、特別枠への申請・採択件数が多かったことで、採択率が高まったと推測されます。
 Withコロナ・Afterコロナを見据えた事業再構築のための補助金ですので、政策の趣旨が反映されていますね。

 以上の通りやすい業種の情報からは、「定量的な事業計画書を作る」「コンサルタントを活用する」「新型コロナに対応した事業計画とする」といった点が参考にできそうですね。

通りやすい取り組み

 通りやすい業種は、事業再構築補助金事務局の発表で把握できましたが、「通りやすい取り組み内容」は分かるのでしょうか?実はこちらも把握できます。そのためには、採択者名とともに発表される「事業計画名」を分析することが有効です。

 下表は、第1回目の一般型の採択者の事業計画名から、筆者が目立つと感じたキーワードをピックアップし、これらを含んだ採択案件の件数を順に並べたものです。

 事業再構築補助金は、コロナ禍からのV字回復に向けた取り組みを支援する補助金です。そのため、「EC」「テイクアウト」「非接触」などWithコロナ・Afterコロナに対応するための取り組みが多いことが分かります。「AI」「DX」など、ビジネスのトレンドであるキーワードも上位に位置していますね。加点要件にもなっている「連携」もよく使われています。
 また、業種別の採択率では圧倒的な高さであった「製造業」の取り組みと思われる案件で目立つキーワードも、次の表にまとめました。

 コロナ禍でも好調な「半導体」、労働力人口の減少を見据えた自動化のための「ロボット(導入・参入)」、差別化要因である「高精度」「精密」などが上位を占めました。さらに、旬のキーワードである「IoT」「EV」なども上位に位置しています。
 これらは、「ものづくり補助金」でも頻繁に目に留まるキーワード。製造業の事業者が「ものづくり補助金」の代わりに、補助金額の大きい事業再構築補助金を利用するケースが多いと推察されますね。

 取り組み内容が明確に決まっていない場合は、上記2つの表でご紹介したキーワードから取り組みのヒントを探すと良いでしょう。

まとめ

 いかがでしたか?事業再構築補助金に通りやすい業種の代表格は、「製造業」と「宿泊、飲食サービス業」。通りやすい取り組みは、Withコロナ・Afterコロナへの対応、半導体業界への参入、ロボット・IoTなどの活用といった「市場環境の変化に対応するもの」であることが分かりました。
 これらをヒントに、「蓄積してきた技術やノウハウ」「外部とのネットワーク」といった「自社の強み」を活かせる取り組みを模索することが、事業再構築補助金の採択・コロナ禍からのV字回復につながります。
 そして、「採択される可能性をさらに高めたい」という場合には、製造業の高い採択率の一因である、「コンサルタントの活用」も選択肢の一つに入れることがオススメです。

中小企業診断士 児山

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