コロナ禍で事業が傾いた企業を支援する事業再構築補助金。新規事業の費用を1/2~3/4も補助してくれる魅力的な制度です。

ただし、この事業を使って成功するためには、補助金に採択されるだけでは不十分と言わざるをえません。
新規事業の目的は、事業を軌道に乗せて長期的な売上・利益を出し、企業を成長させることです。補助金の活用はこのための資金調達の手段であって、「目的」ではありません。

そこで、事業再構築補助金の採択事例などを踏まえた、意外な落とし穴とその回避方法を解説していきます。

採択を獲得するだけの事業計画だと成功しない

事業再構築補助金の採択率は、通常枠で4割前後、特別枠で7割前後です。
採択される案件は、補助金の審査員が審査項目をもとに採点し、採択率に基づいて高得点の案件から選ばれていきます。

この審査項目の内容は、次の4点で構成されます。

(1)補助対象事業としての適格性
(2)事業化点
(3)再構築点
(4)政策点

良く見てみると、実際に新規事業を成功させるために必要な要素は、(2)(3)の2点のみです。
つまり、審査項目を意識して記載した事業計画書の内容の半分は、実際の新規事業の成功のため以外の内容だということです。

審査員はその限られた事業計画書の情報の中から、事業成功の可能性を判断し、採点します。
十分な情報がない中での審査であるため、いかに審査員が事業経営に精通していたとしても、事業が成功する可能性を正確に判断することは困難です。

また、採択されるにしても、トップで採択された企業の事業計画と、ギリギリ採択された企業の事業計画では、その精度にも大きな差が生じています。
これを「採択」と一括りにしているので、企業ごとの成功の確率が大きく異なるのは当然です。

このようなことから、「補助金の採択=事業の成功」ではないこと考えて良いでしょう。
次に、短期的には「成功」に見えても、思わぬ落とし穴が待っているケースをご紹介します。

初動が良くても長続きしない場合が多い

最近は新聞の記事や、Webニュースで「コロナ禍で新規事業を立ち上げて成功しました。これには事業再構築補助金を活用。金融機関もこれを支援しました」という内容が散見されます。

ただ、これらの記事を読んで「成功して良かったですね。」とは到底思えません。
少し俯瞰して見れば分かることですが、この時点での成功はあくまでも初動が良かっただけの話だからです。(中には初動する「?」な記事もありますが…)

タピオカブームのようなトレンドに乗って一時的に稼ぐ、「ヒットアンドアウェイ」の戦略は事業としてはアリですが、補助金を活用する場合にはNGです。
なぜなら、補助金で導入した設備や改装した建物には処分制限がかかり、法定耐用年数の間は自由に処分できないからです。それでもこれらの設備等を処分(売却・譲渡・交換・廃棄・賃借)などをする場合には、補助金の返還義務が発生します。

つまり、補助金を活用した新規事業においては、初動が良いだけでは不十分であり、長期的に売上・利益が計算できる必要があるのです。

特に、BtoCで「地域初のスイーツ店を開店」「FCの〇〇店を開店」などは要注意です。皆さんの近所にできた飲食店やテイクアウト店を想像してみてください。
ご想像のとおり、物珍しさから初動だけは良く、すぐに飽きられて客数が減少する。という状況に陥りやすいのが現実です。

この状況を回避するためには、「地域性」「立地」「競合の状況」「価格を下げた際の収益性」「今後の展望」などを踏まえて、十分に計画を練ることが必要です。専門家の意見も取り入れた方が良いでしょう。

次に、これに関連して「新規参入する市場についての注意点」をご説明します。

注目度が高い市場で競合が激増している事業

コロナ禍で多くの企業が苦しんでいますが、コロナ禍が追い風となって好調な市場も存在します。
このような市場は、本業が苦しい中で活路を見出すための新規事業として、注目が高まっています。

では、具体的にはどのような事業が人気なのでしょうか?例として真っ先に挙げられるのが、「グランピング」と「焼肉店」です。

●グランピング

グランピングとは「グラマラス(魅力的)」と「キャンプ」を組み合わせた言葉で、豪華で魅力的なキャンプのことを意味します。
一般的なキャンプが、自身で食材を購入し、テントを立てて…という工程を経ることに対し、グランピングでは個々にトイレやシャワー、ベッドといった快適な居住空間と、豪華な食材があらかじめ用意されています。

そして、キャンプを回避する理由となる「虫が苦手だからキャンプは嫌だ」「火起こしができなさそう」といった悩みとは、無縁のキャンプ体験ができるのが特長です。
アウトドア・個別宿泊で三密を防げることに加え、高級路線のため客層が良く、客単価も高いため、特に注目が集まっている事業です。

●焼肉店

コロナ禍の外食産業で業績を伸ばしたのは、やはり焼肉店でしょう。
煙を吸うためのダクトが「換気対策」となり、食べるものは焼く工程で「熱消毒」できるため、コロナ禍でも安全な外食の選択肢としての地位を確立しました。
一人焼肉の専門店も多数出店されています。

このような市場に進出すると、多くの場合は初動で多くの顧客を獲得できるでしょう。
しかしながら、長期的には苦境に陥る可能性は高いです。なぜなら、いずれも「参入障壁が低い」ため、好調な企業を見た後発企業が参入してくるからです。

同じ商圏内に競合が増えると、自社の顧客が減少する可能性が高くなります。その結果、価格競争が勃発して一品単価・客単価が低下し、売上・利益ともに減少してしまいます。

この状況を防ぐために必要なのものは、事業に十分な差別化要素を組み込むことです。
グランピングであれば、「拠点の付近にあるレジャー事業者と連携したアクティビティ(川下りや果物狩りなど)の充実」、「地元のこだわり直材の調達ルート・調理方法の確立」などが考えられますね。

トレンドの事業に進出する場合には、かならず差別化要素を加えて、「長期的な事業継続」を可能にする仕組みを構築しましょう。

まとめ

いかがでしたか?補助金に採択されることはスタートであり、ゴールではありません。
「採択されるだけの事業計画」ではなく、「事業の長期的な成長・発展を見据えた計画」を策定することが必要です。

このような計画策定には、信頼できるコンサルタントとの連携が欠かせません。
当社には、幅広業界で信頼できる実績豊富な中小企業診断士などのコンサルタントが多数在籍しており、補助金採択・事業の成功を力強くサポートします。
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