コロナ禍でダメージを受けた企業を支援する事業再構築補助金。新規事業に要する費用の1/2~3/4も補助を受けられる制度です。


 ただし、この制度を活用する場合には、「新規性要件」「売上高構成比要件」などの様々なルールがあります。
 このルールを理由に、「ウチには関係ないか」という認識を持つ企業が特に製造業に多いのですが、実際には事業再構築補助金を活用できるケースが多いです。

 そこで、今回は製造業が事業再構築補助金を活用するメリットや、活用時のポイントについて解説していきます。

製造業が事業再構築補助金を使うメリット

 製造業を営む企業が事業再構築補助金を使うことには、様々なメリットがあります。その中でも特筆すべきは、次の5点です。

①設備投資・広告宣伝について補助を受けられる
 事業再構築補助金でもっともポピュラーな補助対象経費が、「機械装置費」です。製造業では生産能力の向上、新たな製品の製造のために、設備投資は欠かせません。

 全額を自社負担する場合には設備投資の費用対効果が低くなるケースでも、その3/4や2/3などの補助を受けられるのであれば自社負担額は激減し、費用対効果が大きくプラスに傾くことも多いです。

 また、新商品を開発するなどの計画の場合には、広告宣伝費の補助も受けられます。具体的には、チラシやパンフレットの製作といったリアル広告、リスディング広告の掲載やLP・ECサイトの製作などのWebマーケティングにも活用可能です。

②建物の新築・増改築について補助を受けられる
 世の中に存在するほとんどの補助金では、「建物」の新築や増改築は補助対象になりません。しかし、事業再構築補助金では補助対象になります。(新築の場合は、新築でなければ不都合がある旨の理由が必要)

 製造業ではファブレスでない限りは、製造する場所、つまり「建物」が欠かせません。こちらも設備投資と同じく、安い買い物では済みません。
 そのため、諦めることが多いですが事業再構築補助金を活用することで建物を整備するための自己負担額が減少し、建物工事をしやすくなります。

 「老朽化した工場の建て替え」や「製造ラインのレイアウト変更」など、補助金の活用によって、思い切った投資に活用したいところです。

③ものづくり補助金よりも補助金額が高い
 事業再構築補助金はものづくり補助金よりも、補助金額・補助率が高く設定されています。従業員20名の場合、事業再構築補助金では補助上限が2,000万円ですが、ものづくり補助金では1,000万円にとどまります。

 次の表は、両補助金の従業員数ごとの補助上限額などをまとめたものです。(それぞれの補助金の公式サイトから抜粋)事業再構築補助金の方が補助金額が大きいことが分かります。

●事業再構築補助金の補助金額(一般型)

●ものづくり補助金の補助金額(一般型)

④ものづくり補助金のような「賃上げ要件」がない
 ものづくり補助金の活用で大きなハードルとなるのが「賃上げ要件」です。最低でも3年間は、補助事業を実施する事業所で最も賃金の低い従業員の時給を、その地域の最低賃金額+30円以上にする必要があります。

 賃金水準が高ければ問題ありませんが、労働集約的な事業で最低賃金付近で雇用している従業員がいる場合、ものづくり補助金を活用するためには、賃上げが欠かせません。今後も最低賃金は毎年高まっていくことが予想されるため、この賃上げ額は大きな負担になる場合がありますね。

 また、給与支給総額の伸び率についても一定以上の伸び率で計画立案が必要です。この伸び率と先ほどの最低賃金+30円を守れないと、補助金が返還になるペナルティが用意されています。

⑤事業計画書を作成することで経営の精度が高まる
 普段の経営で事業計画書を作ることが少ない企業でも、補助金を使う場合は作成が必要になります。採択されるレベルの事業計画書を作成するには、自社・競合・市場の状況を正確に把握し、適切な戦略をつくることが欠かせません。

 そのため、事業計画書を作成する中で自社の置かれた状況や強み・弱み・機会・脅威などを再認識する機会が生まれます。これは、今後の経営にとってもプラスに働くことでしょう。

 次に、「新規性」について考えていきましょう。

製造業における「新規性」の考え方

 世間では、「事業再構築補助金=別業種の事業立ち上げ」という印象が一人歩きしています。そして、事業再構築という言葉から、「既存事業と全く関係のない新規事業でないと対象外」という先入観を持ってしまいがちです。

 たとえば、金属加工業⇒焼肉店、ホテル業⇒スポーツジム、というような、いかにもな異業種進出が必須だ。と思ってしまう方が多いですが、現実にはこれほど大きな振れ幅は必要ありません。

 では、どの程度の「新規性」が必要なのでしょうか?これについては、「事業再構築指針」という決まりごとで規定されています。この中で解説されている新規性は、「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」の2点です。
 それぞれの要件の内容は、次のとおりとなってます。(事業再構築補助金HPより抜粋)

 つまり、これまでに「製造したことがない」もの、現在の設備では「作れない」ものであり、なおかつ自社製品の中で「新たな性能・効能をもっている製品」をつくることが必要なのです。
 併せて、「既存の商品とバッティングして売上のカニバリゼーション(共食い)」が発生しないことも要件となっています。

 ですので、「既存の製品を改良して他の用途に使えるようし、新たな顧客に販売していく。ただし、現在の設備では加工できないので、新しい設備を買う。」という計画は、事業再構築補助金の対象事業として成立します。

 最後に、事業再構築補助金の活用事例を見ていきましょう。

製造業の事業再構築補助金の活用事例

それでは、実際に製造業が事業再構築補助金を活用したケースをご紹介します。

●プラスチック金型製造⇒ダイカスト金型製造
 従来はプラスチック金型のみを製造していた企業が、事業再構築でダイカスト金型の製造に進出するパターンです。自動車の部品であった場合、プラスチック金型は内装周り、ダイカスト金型はエンジン周りの製品の製造に使用されます。

 そのため、製造するモノ自体も変わることに加え、受注先(市場)が異なるので、自社の事業間での共食いが発生しないため、事業再構築指針に合致することになります。

●特殊鋼加工⇒ステンレス加工
 こちらも上記の例と同様に、製造するモノ・受注先(市場)が全く異なるので事業再構築指針に該当する事例ですね。

●オーダー品の小ロット受注⇒規定品の量産受注
 こちらは、売上が小さく不安定なオーダー品の小ロット加工を行う企業が、事業再構築を試みて量産用の加工機械を導入し、量産受注を目指すパターンです。

 この場合は、受注先が変わることはないかもしれませんが、製造するモノが変わり、しかもオーダー品と量産品は用途・需要が異なるため、事業再構築指針に該当することになります。

 ちなみに、事業再構築で行う新たな取り組みは、「3~5年後には自社の売上の10%を占めるところまで成長する。」ということが要件の一つです。これは必達ではなく計画で、未達の場合のペナルティはありませんが、見通しの明るい計画を立てる事が必要です。

まとめ

 いかがでしたか?事業再構築補助金は大きな事業転換が必須と思われがちですが、実際にはそんなことはありません。
 製造業が若干目先を変えるような取り組みも、要件を満たせば活用可能です。

 とはいえ、厳しい競争を勝ち抜いて採択されるためには、信頼できるコンサルタントとの連携が欠かせません。
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