新型コロナによって売上が下がった企業のV字回復を支援する事業再構築補助金。1兆円を超える予算規模のかつてない大型補助金で実施されており、全8回の公募が予定されている大注目の制度です。

 事業再構築補助金で採択されるためには、優れた内容の事業計画書の作成が必要です。事業計画書は自社で作成できればベストですが、日々の仕事で忙しい経営者が時間を確保し、自らこれに対応することは簡単ではありません。

 そのうえ、事業再構築補助金では、応募する大半の企業が「外部の支援者」の協力を得て事業計画書を作成しています。つまり、経営者自身が事業計画書を作成する場合、その道のプロと同じ土俵で戦うことになるのです。これは相当に厳しい戦いになります。

 そのため、採択を目指すためには、外部の支援者とタッグを組むことが現実的。そこで今回は、「どのようなコンサルを選べば良いか」について解説していきます。

コンサルタント選定軸

①実績と経験値:最低5年の経験値

再構築補助金は非常に好条件で魅力的な制度ではありますが、その反面リスクが非常に高くあります。例えば、数千万円の補助額を受給後に資料不備や不正などにより全額返金と言う事もあります。
すでに銀行から借入を行い、費用の支出をした後で、補助金がおりないとなると、致命的な状況に置かれます。
こうした高いリスクを防ぐ事が重要軸となります。

補助金は申請や1年だけで終わるものではなく、最後まで見届けた数が相当数なければ、数年後に大きなトラブルになる可能性があり、少なくとも補助金支援年数として最低5年は必要ですので、経歴の長い支援会社に依頼をお勧めします。


②採択数・採択率:採択数15社以上・通年の採択率最低65%以上

採択されなければ土台にならないため、採択率の高い支援会社の選定が必要です。
ただし、高採択率を謳う会社の中には、支援数が少なすぎる事や、採択率の高い回数のもののみ、連携先の数値を掲載している企業があります。

このため、少なくとも15件の採択数を持ち、かつ、通年の採択率が最低でも65%以上の企業を選定しましょう。

③料金・支援範囲:補助額の10%以内・できれば受給まで

料金は低いほど良いとは思いますが、安ければその分時給が低い、と言う事でもあるため、質の高い支援会社である可能性は高くはありません。
このため一般的な料金の10%以下がよいと思います。

また支援範囲は、料金と比例しますが、
補助金に慣れているのであれば、申請までのサポートとして安く抑える
補助金が初めてであれば、補助金受給までのアドバイスが含まれる支援会社を選定する

事業再構築補助金の支援機関種別採択率

 まずは事業再構築補助金の採択率を見ていきましょう。
 第5回公募では、応募件数21,035件に対し、採択件数9,707件でした。採択率にして46%という結果ですね。
 ちなみにこの数字は、難易度の高い「通常枠」だけでなく採択されやすい「特別枠」なども含めた数値となっています。(下図は事業再構築補助金HPより抜粋)


 事業再構築補助金のHPでは、応募類型ごとの採択率だけでなく、企業の事業計画書の作成を支援した支援者の属性ごとの採択率も公表されています。結論から申し上げると「民間コンサルティング会社」の支援を受けることがベストな選択です。
 ここからは、代表的な支援者とその採択率などをご紹介していきます。

税理士

 企業の最も身近な相談相手といえば、真っ先に税理士が思い浮かぶと思います。実際に、事業再構築補助金では、税理士による支援も多く行われています。

 その税理士ですが、支援者としての採択率は最も低い34.1%となっています。事業再構築補助金全体の採択率が46%ですので、平均的な採択率を大きく下回っていますね。

 この結果は意外と思われる方も多いでしょう。会計や税務に詳しい税理士は、必然的に経営にも詳しい、というイメージがあります。ただ、実際に質の高い事業計画書を作成できる税理士は、あまり多くありません。その結果が34.1%という数値に表れています。

 ちなみに税理士法人が支援した場合の採択率は、40.8%となっています。個人の税理士よりも高い数値ですね。税理士法人となると、一定の人員が備わっていることが想定されます。
 税理士本人ではなく、事業計画書の作成に精通した人員が携わることもあるため、個人の税理士よりも高い採択率になったのでしょう。

 次に、行政書士について見ていきましょう。

行政書士

 「街の法律家」として、国や自治体に提出する書類の代行などを行う行政書士。事業計画書の作成を支援するイメージをお持ちの方は少ないと思いますが、補助金の申請についても、その守備範囲内となっています。

 この行政書士が支援した場合の採択率は、41.4%です。税理士よりは高いものの、こちらも平均を大きく下回る数値となっています。

 この要因は、事業計画書を作成できるスキルを持つ行政書士が少ないからだと考えられます。行政書士の資格を得るための国家試験は、法律に関する内容であるため、企業経営に関しては学びません。もちろん、行政書士の資格を持ちながら、経営の知識を持っている方もいるとは思いますが、そのような方はごく一部です。

 日頃のお付き合いなどの延長で、事業再構築補助金の支援者として選ぶ際には、「経営に関する知見を持っているか?」「事業計画書の作成経験があるか?」などの情報収集は必ず行っておきましょう。

 次は、中小企業診断士について見ていきましょう。

中小企業診断士

 経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士。世間的な認知度は高くない資格ですが、補助金界隈では抜群の知名度と実績を有する資格です。
 この中小企業診断士が支援した企業の採択率は、52.9%と平均を大きく上回る数値となっています。この数値は、分類された全支援者の中でトップの数値です。
 中小企業診断士は、なぜこのような実績を残せているのでしょうか?その主な要因は、次の2点です。

 1点目は、「経営に関する知識の広さ」です。中小企業診断士を取得するための国家試験では、1次試験で7科目、2次試験で4科目の学習が必要であり、経営に必要な幅広い知識を習得します。
 そのため、事業計画書の作成支援においても、マーケティング・生産活動・IT・財務・法務など抜け漏れのない内容に仕上げることができます。

 2点目は、事業再構築補助金の審査員に中小企業診断士が多いからです。国が公表している資料の中にも明記されていますが、事業再構築補助金は事業計画を審査する審査員は、中小企業診断士がメインで行っています。

 そのため、支援者である中小企業診断士には、同じ中小企業診断士である審査員が「どのような視点で事業計画書を見るか?」をイメージし易いという強みがあります。つまり、審査員目線で望ましい事業計画書を作る支援ができる、ということですね。
 支援者選びにお悩みの際は、中小企業診断士を有力な候補にすると間違いはないでしょう。

 さて、ここまでは士業をご紹介してきましたが、ここからは個人でない組織の支援者を見ていきましょう。

公的支援機関

 「公的支援機関」というとイメージがしづらいかもしれませんが、代表的な機関としては、「商工会議所」や「商工会」があげられます。他にも、地域ごとの「産業支援機構」や「中小企業団体中央会」といった機関など、規模・知名度ともに様々な支援機関が存在しています。
 補助金活用に積極的な方は、商工会議所・商工会は「小規模事業者持続化補助金」で、中小企業団体中央会は「ものづくり補助金」でご存知の方も多いでしょう。

 このような公的支援機関も、事業再構築補助金の事業計画書の作成を支援しています。実際の支援担当者は、プロパーの指導員であるケースと、専門家として招聘している中小企業診断士などであるケースがあります。

 ここで注意したいのが、プロパーの指導員である場合は、「依頼する公的支援機関の担当者によって対応の温度差が大きい」という点です。熱心に指導してくれる担当者もいれば、最低限の表面的なアドバイスにとどめる担当者もいます。

 このような減少が起きる要因は、公的支援機関には通常業務があり、補助金相談のようなスポット業務に力と時間を注ぐことは、担当者自身の首を絞める行為になる可能性が高いためです。
 基本的に無償での支援が前提で、有償だとしても年会費1,2万円程度であるため、仕方ないといえば仕方ないですね。

 さて、このような公的支援機関の実績ですが、商工会が支援した案件の採択率43%商工会議所の案件は44.5%となっています。商工会議所が若干上回っているのは、「外部専門家を招聘する予算が十分に確保されている」こと、「商工会の会員よりもスケールの大きい企業が多いこと」が主な要因でしょう。

 採択率としては、今ひとつですが、基本的に「無償で支援を受けられる」という点は大きなメリットです。また、窓口で中小企業診断士の支援を受かられるケースもありますから、費用をかけない選択肢のひとつとして一考の価値はあるでしょう。

 次は、一見無償のようにも見える金融機関について見ていきましょう。

金融機関

 支援者としての実績件数が圧倒的に多いのが、金融機関です。地方銀行・信用金庫の支援件数のみで、全体の応募件数の3分の1を占めています。補助金で新規事業を行う場合、内部留保がよほど潤沢でない場合は、金融機関からの融資を受けることになるでしょう。

 また、補助金は多くの場合、入金までに1年間ほどの期間を要するため、資金の支出から補助金の受給までのつなぎ資金が必要となる場合が多いです。この際にも、金融機関からの融資は欠かせません。これらの融資相談を金融機関に行う流れの中で、金融機関の支援を受けることになります。

 さて、金融機関の支援案件の採択率は、地銀49.7%信用金庫48.8%信用組合43.7%商工中金52.8%となっています。全体的に高い採択率ですが、信用組合の採択率の低さと商工中金の採択率の高さが際立っていますね。商工中金の支援件数は地銀の3%程度にとどまりますが、質の良さが伺えます。

 高い採択率を誇る金融機関ですが、こちらも公的支援機関と同様に、プロパーの人材が直接支援するケースだけではありません。むしろ、プロパーの銀行員が支援するケースは稀と言っても差し支えないでしょう。

 多くの場合は、金融機関が企業に対して、外部の中小企業診断士などのコンサルを紹介します。そして、事業計画書は企業が専門家とともに作成し、申請に必要な「認定支援機関の確認書」や「金融機関の確認書」の発行を行う、というパターンが多いです。

 ここで注意が必要なのは、基本的に費用が発生することです。公的支援機関の場合と異なり、金融機関から紹介してもらった中小企業診断士などから受けるコンサル費用は、企業が直接コンサルに支払うことになります。
 また、良いコンサルを紹介された場合は良いですが、そうでなかった場合は時間もお金も無駄になるという悲惨なことになります。

 この他、A銀行から補助事業の資金について融資を受ける場合、知人に良いコンサルがいたとしても依頼はできず、あくまでもA銀行から紹介されたコンサルに依頼しないといけない。という縛りを設けている金融機関もありますので、熟考することが必要でしょう。

 最後に、民間コンサルティング会社を見ていきましょう。

民間コンサルティング会社

 事業再構築補助金の支援には、多くの民間コンサルティング会社がひしめき合っており、その規模感は様々です。少人数のコンサル会社が多くを占めてはいるものの、中には上場しているコンサル会社までもが事業再構築補助金の支援を行っています。

 この民間コンサルティング会社ですが、支援件数は地銀・信用金庫に続いて第3位となる、2,727件と高い数値。そして採択率50.7%と平均を上回っており、中小企業診断士の52.9%、商工中金の52.8%に次ぐ高さです。

 高い実績の要因は、大きく2点あります。

 1点目は、常日頃から事業計画の作成を行っているため、補助金もその延長で支援できる点です。普段から顧問先のことは良く知っていることも多いですし、新規事業の提案も行っていれば、その計画を事業再構築補助金の事業計画書に落とし込むことは用意です。スポットでの対応の場合も、その分野の専門が対応してくれるケースが多いでしょう。

 2点目は、筋の良いコンサルタントを外部に抱えている点です。コンサルティング会社は業務を自社ですべて完結させるのではなく、業務の一部を外注しています。
 そのため、外注先として優秀な人材を抱えていることが多いのです。事業再構築補助金においても、外注先と連携して企業を支援し、採択を勝ち取っているというケースが増えています。

 当社もこの「民間コンサルティング」という位置づけであり、その採択率70%を超えています。これだけの実績をあげられているのは、やはり信頼できる外部の公認会計士、中小企業診断士などの専門家との連携ができていることが大きな理由です。

 事業再構築補助金の支援先としては、真っ先に民間コンサルティング会社を検討して間違いはないでしょう。ただし、必ずリアルまたはWebで面談を行い、「人柄が良いか」「契約内容をきちんと明示してくれるか」などを確認することがオススメです。

 補助金活用の理想である、「誠実な支援者と契約⇒魅力的で実現可能な事業計画を作成⇒見事に採択を勝ち取る⇒新規事業も成功する」という流れを実現したいですね。

まとめ

 いかがでしたか?採択率が特に高いコンサルは、中小企業診断士・民間コンサルティング会社という結果でした。

 事業再構築補助金に採択されるには、「どのような新規事業を計画するのか」が大切なのはもちろんですが、「誰の支援を受けて事業計画書を作成するか」も同じくらい大切です。採択率の高いコンサルの傾向を把握したうえで、専門家・組織の担当者の人柄や能力を見極めて支援を受けたいですね。

 とはいえ、膨大な数のコンサル・支援機関から信頼できる相手を探すことは、一筋縄ではいきません。当社にご相談いただければ、お客様の業種に精通した実績豊富な中小企業診断士などのコンサルタント補助金採択・事業の成功を力強くサポートします。
 ぜひお気軽にお問い合わせください。

その他の採択率の高いおすすめ補助金

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、中小企業・個人事業等の設備投資による生産性向上革新的なサービス開発について、最大3,000万円の補助を受けられる制度です。2012年から国の補正予算によって運用され、人気の補助金となっています。
 業種や用途も様々で、代表的な活用方法としては、製造業による加工機械・検査機器の導入や、建設業による重機や計測器ドローンの導入、農業によるトラクターや精米機・選別機の導入などが挙げられます。
制度概要詳細はこちら

事業再構築補助金

事業再構築補助金の総予算は2020年補正予算にて1兆円1,485億円、2021年補正予算にて6000億円確保されており、過去に類を見ない非常にチャレンジングな補助金です。
制度概要詳細はこちら

その他各種一覧まとめ

東京都の補助金・助成金一覧

東京都の企業向け補助金の最新版をまとめています。
詳細はこちら

医療機関向け補助金一覧

医療機関向け補助金の最新版をまとめています。
詳細はこちら

観光・旅行・宿泊事業者向け補助金一覧

観光・旅行・宿泊事業者向け補助金の最新版をまとめています。
詳細はこちら

飲食・外食事業者向け補助金一覧

飲食・外食事業者向け補助金の最新版をまとめています。
詳細はこちら

スタートアップ補助金

スタートアップ向けのディープテック・スタートアップ補助金についてです。
詳細はこちら

文化・芸能・アーティスト・芸術家向けの補助金一覧

文化・芸能・アーティスト・芸術家向け補助金の最新版をまとめています。
詳細はこちら

中小企業向け補助金一覧

2023年度版の中小企業向け補助金一覧をまとめています。
詳細はこちら