令和5年度補正予算において、3,000億円という巨額の予算規模で創設された大規模成長投資補助金(正式名称:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金)。「大規模の投資(投資額10億円以上)」が必要であるため、活用できる事業者は限られるものの、最高50億円の補助金を得られる魅力的な制度です。それでは、制度の詳細について詳しく解説していきます。

大規模成長投資補助金特設HPはこちら

大規模成長投資補助金とは

大規模成長投資補助金は、地域の雇用を支える中堅・中小企業の大規模な投資を支援する制度です。これらの企業が人手不足等の経営課題に対応し、企業の成長」と地方における「持続的な賃上げ」を実現することを目的としています

大規模成長投資のイメージ

出典:内閣府HP

経済産業省は、「ものづくり補助金」や「持続化補助金」などを通じて中小企業・小規模事業者を支援していますが、これからは地域雇用への波及効果が高い「中堅企業の支援」についても積極的に進めていく方針としています。

どんな企業・取り組みが採択されやすいか?

どのような企業が採択されやすいかと言う視点では、以下のような企業がど真ん中と思われます。

  • 成長産業である製造業・物流事業者(特にAI・半導体・脱炭素・防衛・宇宙などの成長産業であり国策セグメント)※不動産業の賃貸マンションも対象とはなりますが、採択のされやすさでは成長産業である製造業が高いと想定しています
  • 従業員100人以上の地域の雇用を支える企業
  • 総売上の20%程度に寄与する事業である
  • 新たに生産性の高い雇用を創出する(既存事業の総売上の20%向上だとすると、従業員数は15%程度は増加)
  • 労働生産性のCAGRが4,5%(必須は約3%)
  • 財務基盤良好
  • 東証プライムを除く従業員2000人未満(必須要件)

事業スキーム

出典:「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」概要資料

国(経済産業省)が民間企業等(事務局)に補助金を託し、事務局が公募・採択事業者の選定を行い、採択された中堅・中小企業に補助金を交付します。採択事業者の選考については、経済産業局が所管するエリアごとに審査委員会を設置する見通しです。
なお、事務局を務めるのは、株式会社博報堂、TOPPAN株式会社です。いずれも補助金運営に精通していますので、採択後の事業遂行におけるバックアップ体制は万全と考えて良いでしょう。

次に、補助対象事業者と補助事業の要件をご紹介します。

補助対象事業者・補助事業の要件

補助対象事業者

補助対象事業者は、中堅・中小企業(常時使用する従業員数が2,000人以下の会社等)です。

※一定の要件を満たす場合、中堅・中小企業を中心とした共同申請(コンソーシアム形式:最大10社)も対象となります。
※みなし大企業や実施する補助事業の内容が農作物の生産自体に関するものなど1次産業を主たる事業としている場合は補助対象外。

補助事業の要件

補助事業の要件は以下の通りです。

投資額10億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)
賃上げ要件(補助事業の終了後3年間の対象事業に関わる従業員等1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が、事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上)
※持続的な賃上げを実現するため、補助金の申請時に掲げた賃上げ目標を達成できなかった場合、未達成率に応じて補助金の返還を求めます(天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合を除く。事業者名は公表しない。)。

※賃上げ要件の詳しい計算式や事例等は、概要資料(こちら)をご確認ください。

補助率と補助上限金額等

必要な投資規模、補助率・補助金額は次のとおりです。

  • 投資規模:
    • 10億円以上(これを下回ると応募できません)
  • 補助率:
    • 1/3(中小企業・中堅企業いずれも補助率は同じ)
  • 補助上限額:
    • 50億円
  • 採択件数:
    • 未定(予算総額は3,000億円)

補助対象経費

補助対象経費は、建物費(拠点新設、増築等)、機械装置費(器具・備品含む)、ソフトウェア費外注費専門家経費の5項目です。詳細は以下の通りです。

1. 建物費

専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設、増築、改修、中古建物の取得に要する経費(単価100万円(税抜き)以上のものに限る)

備考
・生産設備等の導入に必要な「建物」、建物と切り離すことのできない「建物附属設備」、及びその「付帯工事(土地造成含む)」は対象
・建物の単なる購入や賃貸、土地代、建物における構築物(門、塀、フェンス、広告塔等)、撤去・解体費用は対象外

2. 機械装置費

① 専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費(単価100万円(税抜き)以上のものに限る)
② ①と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費

備考
・「機械及び装置」、「器具及び備品」、「工具」は対象
・「構築物」、「船舶」、「航空機」、「車両及び運搬具」は対象外
・事業者とリース会社が共同申請をする場合には、機械装置又はシステムの購入費用について、リース会社を対象に補助金を交付することが可能

3. ソフトウェア費

① 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用、クラウドサービス利用に要する経費(単価100万円(税抜き)以上のものに限る)
② ①と一体で行う、改良・修繕に要する経費

備考
・「パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの本体費用」は対象外

4. 外注費

補助事業遂行のために必要な加工や設計、検査等の一部を外注(請負・委託)する場合の経費
※4及び5の合計額は、1~3の合計経費未満

備考
・「成長投資計画の作成に要する経費」、「外注先が機械装置等の設備やシステム等を購入する費用」、「外部に販売・レンタルするための量産品の加工を外注する費用」は対象外

5. 専門家経費

補助事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
※4及び5の合計額は、1~3の合計経費未満

備考
・本事業の遂行に専門家の技術指導や助言が必要である場合の専門家に依頼したコンサルティング業務や旅費等の経費が対象
・「成長投資計画の作成に要する経費」は対象外

次に、想定される具体的な活用事例をご紹介します。

補助対象となる取り組み例

大規模成長投資補助金は、「労働生産性の抜本的な向上と規模拡大」を押し進めることを支援する制度であるため、次のような取り組みが補助対象になると考えられます。

工場の新設

製造業を営む事業者による工場の新設。このケースが最も多いのではと思われます。ただし、一般的な工場よりも生産効率が高い工場であることが不可欠です。
 そのためには、工場の効率的なレイアウト設計はもちろんのこと、IoTやAIなどを用いて「自動化・省力化された設備」の導入が必須となるでしょう。

物流センターの新設

卸売業を営む事業者や、大規模の製造業による物流センターの新設。このケースも大規模成長投資補助金を使いやすいでしょう。Amazonの物流センターに代表されるように、センサー・自動搬送ロボット・AI・IoTにより、物流センターでの商品格納・出荷の自動化は急速に進化しています。
Amazonのような規模・自動化レベルとはいかないまでも、物流センターは「大規模投資による省人化」を実施しやすい業種です。全額自己負担での投資はハードルが高いですが、補助金の活用で投資額の1/3が補助されることを加味すると、チャレンジする価値は相当に高いと言えます。

既存拠点への大規模設備投資

現在稼働している工場の生産ラインや物流センターに、「レイアウト変更」や「最新設備の導入」を行うことによって拠点を再構築し、自動化・省力化を実現する取り組みも補助対象になるでしょう。このケースですと、新拠点の建設という資金的・期間的なハードルを大きく下げられるため、上記の2パターンよりも挑戦しやすくなります。
ただし、こちらのパターンでも「高度な自動化ラインの構築」「10億円以上の投資規模」が不可欠である点には注意が必要です。

スケジュール

  • 公募開始:令和6年3月6日(水)
  • 公募締切:4月30日(火)
  • 審査:5月中旬~6月中旬
  • 採択発表:6月中下旬頃(以降順次、交付決定)

1次公募終了後、2次公募を予定

経済産業省 公式資料【概要資料】

まとめ

いかがでしたか?公募開始が近づいている大規模成長投資補助金。多額の資金を要する新拠点の建設や大規模な設備投資をお考えの事業者様とっては、最大で50億円の補助を受けられる大きなチャンスです。これを獲得できれば、新拠点等の損益分岐点を大きく引き下げることが可能となり、資金繰り面でも大きな恩恵を受けられます。

当補助金はこれまでと異なり「コンサルファームの資料作成ノウハウ×経済産業省の補助金に精通した高度な知識とノウハウ」が必要です。弊社は、グローバルユニコーンを支援する戦略ファーム出身者・会計士・中小企業診断士が在籍し、経済産業省の補助金の獲得実績が豊富であり、業界トップクラスの支援数をマークしています。
対応可能な件数には限りがありますので、大規模成長投資補助金にご興味がお有りの事業者様は、お早めにお問合せください。