2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、国はクリーンエネルギーへの思い切った投資を後押しする施策を講じています。

令和3年度補正予算にも、この方針は色濃く反映されており、中小企業庁の補助金では、事業再構築補助金ものづくり補助金「グリーン枠」が設けられました。

このグリーン枠では、応募要件の緩和補助率アップ補助上限額アップなど、事業者に大きなメリットがありますが。その一方で固有の要件もあるため注意が必要です。

そこで、今回は2つの補助金のグリーン枠について詳しくご説明します。

事業再構築補助金

 ポストコロナ・ウィズコロナ時代のビジネス環境の変化に対応するための、思い切った設備投資などを支援する事業再構築補助金。1兆円を超える常識はずれの予算規模でスタートしましたが、2022年は新たに6千億円の予算が追加されました。

 この追加予算によって、公募が8回まで延長。さらには、グリーン成長枠を含む新たな類型が追加され、より使いやすくなりました。

 それでは、事業再構築補助金のグリーン成長枠の特長をご説明します。

(1)グリーン成長枠 特有の2要件
冒頭にご紹介したとおり、日本はカーボンニュートラルを目指し、経済と環境の好循環を作っていく産業政策である「グリーン成長戦略」を推進中です。

この中で、成長が期待される14分野を設定。これらの分野の課題解決に資する取り組みを、事業再構築補助金の枠組みで応援するのがグリーン成長枠です。この枠での応募には、特有の2つの要件をクリアすることが必要です。

①グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決に資する取り組みを行う
14分野の具体的な内訳は下図とおりです。これらの分野は多くの課題を抱えており、この課題解決につながる取り組みを行うことが要件の1つとなっています。

出所:中小企業庁(以下同)

 14分野にはエネルギー関連、輸送製造関連、家庭・オフィス関連など、幅広い業界が含まれており、多くの事業者応募のチャンスがあります。自社の今後の取り組みが14分野の方向性と合致する場合は、ぜひグリーン成長枠を活用したいですね。

(補助対象例:建物改築、工作機械、射出成形機、溶接機、プレス機、ベンディング、ロボット、ソフトウェア、外注費、専門家経費、研修費、クラウド利用費など)

②2年以上の研究開発・技術開発または一定数以上の従業員への人材育成を行う
 グリーン成長枠での取り組みは短期的なものではなく、研究開発人材育成といった長期的な取り組みも要件になっています。一見ハードルが高いように見えますが、いずれもクリーン分野の市場競争で勝ち抜くためには欠かせない取り組み。クリアはそう難しくないでしょう。

(2)売上高10%減少要件が適用されない
 事業再構築補助金は、コロナ禍で売上が減少した企業に対する補助金です。ところが、グリーン成長枠に限っては、売上が減少していなくてもOKとなりました。

 国策であるグリーン成長戦略を、何が何でも押し進めようという、国の意向が見て取れますね。半導体業界や医療機器業界をはじめ、コロナ禍で売上が増加している事業者も多いですが、そうした事業者でも事業再構築補助金を活用できるようになったのは、とても大きな変更といえるでしょう。

(3)補助金上限額が大きいが補助率は低い

 グリーン成長枠はすべての類型の中で最も補助上限額が大きく、中小企業が1億円中堅企業は1.5億円となっています。一方、補助率は他の類型の多くが2/3~3/4である中、中小企業が1/2中堅企業は1/3と低くなっています。

 なお、各類型の補助上限額と補助率は下表のとおりです。

 注意が必要なのは、補助金額が小さい取り組みの場合には、グリーン成長枠よりも通常枠の方が補助金額が大きくなる点です。これは、通常枠の方が補助率が高いことに起因します。投資規模に応じて補助金額をシミュレーションし、最適な類型を選択しましょう。

(4)付加価値の目標基準が高い

事業再構築補助金では、一定の基準をクリアする付加価値目標を達成する計画が必要です。グリーン成長枠以外の類型では、「補助事業終了後3~5年で事業者全体または従業員一人あたり付加価値額を、年率平均3.0%以上増加させる事業計画」の策定が要件です。

しかし、グリーン成長枠では、この付加価値額を年率平均5.0%以上増加させることが要件となっており、他の類型よりも収益性の高い事業であることが求められます。ただし、目標未達の場合のペナルティ(補助金返還)はありませんのでご安心ください。

(5)公募の開始時期

 グリーン成長枠は第6回公募からの新設です。第5回公募までのスケジュールを鑑みると、公募開始2022年4月または5月になるでしょう。

(6)活用例

 中小企業庁は、グリーン成長枠で想定される取り組みの例として、次のような活用方法を挙げています。参考にされてはいかがでしょうか。

①従来:ガソリン車部品の製造⇒今後:電気自動車部品の研究開発・製造

②従来:ニュースアプリの運営⇒今後:CO2の排出削減アプリの開発・運営

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)

 商品開発生産性向上のための設備投資に活用できるものづくり補助金。10年近く続いている人気の補助金です。こちらも、事業再構築補助金とほぼ同様の趣旨で、「グリーン枠」が新設されます。

 グリーン枠では、温室効果ガスを削減する製品・サービスの開発や、炭素生産性を向上する生産プロセス・サービスの提供方法の改善などを行う事業が対象となります。

 それでは、ものづくり補助金のグリーン枠の特長をご説明します。

(1)補助上限額・補助率ともに優遇
 グリーン枠では、補助上限額・補助率の両方で他の類型よりも優遇されます。下表は従業員規模ごとの通常枠とグリーン枠の比較です。

【通常枠】

【グリーン枠】

 記載のとおり、グリーン枠補助上限額は通常枠の約1.5倍補助率は従業員規模を問わず一律2/3となっています。投資規模が大きい場合や、小規模事業者(商業・サービス業=従業員5人以内、その他の業種=従業員20人以内)に該当しないために1/2となってしまう補助率を高めたい場合には特に効果的ですね。

(2)炭素生産性の向上
 クリーン化を推進するため、炭素生産性(付加価値額÷エネルギー起源二酸化炭素排出量)の向上が要件となります。具体的には、「3~5年の事業計画期間内に、事業場単位での炭素生産性年率平均1%以上増加させる」ことが必要です。 

 自社の炭素生産性を把握している事業者は少ないでしょうから、グリーン枠での応募には、まず自社の炭素生産性を知ることが欠かせません。その上で、補助金を使った事業で炭素生産性をどう高めるか?という計画を考えるステップが必要になりますね。

(補助対象例:脱炭素化に寄与する工作機械、射出成形機、溶接機、プレス機、ベンディング、ロボット、ソフトウェア、外注費、専門家経費、研修費、クラウド利用費など)

(3)温室効果ガス排出削減に取り組んでいること
 補助金は「これからどうするか」に主眼を置きますが、グリーン枠では、これまでの取り組みも問われます。具体的には、温室効果ガス排出削減に向けた詳細な取組状況がわかる書面の提出が必要になります。

 グリーン枠での応募には、資源の有効活用・省エネなどのエコ活動に取り組んでいる事業者が、これらを温室効果ガス削減の観点で自社の取り組みをまとめる。という準備が必要です。

 (4)注意点
生産プロセスやサービス提供方法の改善を伴わない設備更新(例:既存機械装置をエネルギー効率の高い機械装置に入れ替えることのみを目的とした事業計画など)は支援対象とはなりません。このようなケースは省エネ補助金などの利用を検討しましょう。

(5)公募の開始時期
 グリーン枠は第10回公募からの新設であり、公募開始2022年2月頃の予定です。

(6)活用例
 中小企業庁は、グリーン枠で想定される取り組みの例として、次のような活用方法を挙げています。参考にされてはいかがでしょうか。

①脱炭素化の設備・システム導入

②需要予測システムの導入

○まとめ
 いかがでしたか?事業再構築補助金のグリーン成長枠、ものづくり補助金のグリーン枠を活用できれば、将来性の高い事業に補助金でリスクを下げながら参入・競争力の強化を行うことができます。今後の事業展開に合致する場合は、ぜひチャレンジされてはいかがでしょうか?

 とはいえ、「新設される類型なので要件や事業計画のポイントに不安だ」という方も多いと思います。その場合は、補助金支援の経験と実績が豊富なコンサルティング会社の支援を受けて採択を勝ち取りましょう!