コロナ禍での苦境から復活を支援する事業再構築補助金。全8回の公募が予定されており、最近では、グランピングや焼肉店など、ニュースや新聞で取り上げられたお店を良く調べると、事業再構築補助金を使っていた。と分かることが増えてきました。
 補助金額の低い特別枠は、比較的採択されやすいものの、補助金額の大きい通常枠は狭き門。採択率は3割強で推移しています。そこで、この高いハードルをどのように超えていけば良いかをご説明していきます。

ページ数は所定の範囲内で最大限使用する

 事業再構築補助金では、事業計画書のページ数の目安が公募要領に記載されています。

事業計画書の具体的内容については、審査項目を熟読の上で作成してください(電子申請システムに PDF形式のファイルを添付してください。以下、1~4の項目について、A4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内)での作成にご協力ください。記載の分量で採否を判断するものではありません)。

 ここでは、”作成にご協力ください”という表現にとどまっており、ページ数の上限が強制されているわけではありません。ですので、仮に30ページの事業計画書を作成しても、ページ数を理由に不採択にされることはありません。

 では、何ページに増えても良いから計画を詳細に記載した方が有利では?と思われるかもしれませんが、そうとも限りません。そもそも、ページ制限がある理由は、“審査員が限られた期間内に大量の事業計画書を読む必要があるから”です。

 この理由で設定されたページ制限を無視することは、審査員の心証を大きく損なう可能性があります。ページ数は審査項目ではないといっても、審査員も人間です。心証の悪化がマイナス評価につながるリスクは大きいですね。
 このような理由から、ページ制限は厳守すべきといえるでしょう。

自社の変遷と現状を分かりやすく説明する

 事業計画書の最初に書いておきたいのが、“自社の変遷”です。初対面の人と会うときには、まず最初に自己紹介をしますよね。補助金もこれと同じです。自社のことを知らない審査員に対して、自社の紹介をしましょう。

 この際には、自社の創業の経緯、成長までの変遷、経営者がどのような理念を持っているかを記載しましょう。この記載があれば、審査員もその企業の成長過程や考えを理解できます。いきなり“本事業での取り組み”の話をされても、審査員の頭にはスッと入りませんが、前提となる情報があれば話は別です。まずはご挨拶ということで、これらを説明しましょう。

 次に必要になるのが、“自社の現状”についての説明です。“自社がどのような状況にいるか”を審査員に理解してもらいましょう。ここでのポイントは、コロナ禍前までの説明にとどめることです。審査項目(3)再構築点の②に次の記載があります。

② 既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスの影響で深刻な被害が 生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いか。

 つまり、高い評価を得るためには、事業計画書内にコロナの影響を明記する必要があるのです。この部分は別パートで構成した方が審査員の印象に残りやすいため、コロナ禍に入ってからの自社の話は後段に譲り、コロナ禍前までの現状説明にとどめておきましょう。

コロナ禍の影響・緊要性を説明する

 事業再構築補助金はコロナ禍からの新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換で事業を再構築することを支援する制度です。そのため、コロナによってどのように苦境に立たされているかを示す必要があります。

 この苦境には、売上減少はもちろんのこと、“売上の不安定化”“先行きの不安”なども考えられます。売上が大きく下がっていない場合は、これをの理由を深堀りすると、コロナの影響による深刻な現状を伝えられるでしょう。

 また、ダメージが深刻な場合は、緊要性、つまり差し迫って必要な理由をしっかりと記載することで、審査員に事業再構築の必要性をアピールできます。売上の減少が著しい場合や、財務状況の悪化が激しい場合などは、その旨も詳細に記載しましょう。

課題の解決方法を代替案の検討も含めて論理的に説明する

 多くの企業は、自社の変遷・現状・コロナの影響の3つが組み合わさり、何らかの課題に直面しています。事業再構築補助金は、この課題を新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換のいずれかによって解決することを目指す制度です。課題を明確にし、その解決方法を明確に示すことが採択には欠かせません。

 課題の数は2~4つの間に収めると良いでしょう。課題が1つだと審査員から考えが浅いと思われかねませんし、5つもあるとそれぞれの説明が大変なうえ、貴重なページの分量を圧迫されてしまいます。基本的には3つの課題を書くと考えておけば良いでしょう。

 課題を説明した後は、その解決方法を提示する必要があります。事業再構築補助金での取り組みでがその解決方法にあたります。ここでのポイントは、軽くで良いので“代替案”も提示しておくことです。1つの方法論しか書いていない場合、そもそもその方法は最適解なのか?という疑問が拭えません。「〇〇〇を導入して〇〇〇するという案も検討したが、〇〇〇という理由によって採用しなかった。」というような記載を加えることで、他社と一味違った深みのある事業計画となります。

補助対象とする取り組みとその効果を説明する

 事業再構築補助金に取り組むことを決めた時点で、取り組みの内容は概ね決まっているでしょう。しかし、補助金に申請される事業計画書の中には、「○○〇装置を導入します」「○○〇の広告を行います」で終わっているものも少なくありません。取り組み内容とその効果を、必ずセットで説明する必要があります。
 ただ、これは難しい側面もあります。既存事業の生産性向上や高付加価値化がメインの“ものづくり補助金”では、設備導入にかかる業務のビフォーアフターを比較し、その効果を定量的に明示できますが、事業再構築補助金では新規事業なので比較する実績がありません。
 ここで大事になるのが進出する分野に存在している競合他社との比較です。具体的な例を3つほどご紹介します。

  • グランピングに参入する場合
    ⇒デザイン性と居住性に優れたエアドームの導入で競合よりも高付加価値
  • 最新の複合加工機を導入する場合
    ⇒最新機種の導入により、加工速度・加工精度・パレットチェンジで競合に勝る
  • ゴルフシミュレーターを導入する場合
    ⇒コースが豊富な機種と豪華な個室で競合よりも高い顧客体験を提供

 生の情報を集めることがハードルになりますが、このように説明できれば、事業計画の説得力は大きく高まります。

競合他社への優位性を”独自資源×本事業の取り組み”で説明する

 これは多くの補助金にいえることですが、設備を導入するだけで実現できる事業には、優位性も面白味もありません。なぜなら、後発の他社が同等・より新しい設備を導入すれば自社の優位性は消滅するからです。審査員目線でこのようなツッコミが可能な事業計画が、高い評価を受けることはありません。
 ではどうすれば良いのでしょうか?事業再構築補助金の審査項目(2)④にその答えがあります。

④ 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規 模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっているか。

 この後半部分が事業の優位性を実現するポイントです。つまり、「既存事業で得た人材・技術・ノウハウといった独自資源」×「導入する設備や実施する取り組み」によって独自性・優位性を発揮することが必要になります。

 経営者の頭の中ではこのロジックがあったとしても、事業計画書で表現しなければその良さは伝わりません。事業再構築補助金の応募にはプレゼンの機会はありませんので、あくまでも事業計画書でアピールしましょう。

費用対効果・投資回収の計画を詳細に説明する

 どんなに「優れた事業です」とアピールしても、儲かる事業でなければ補助金の採択は受けられません。もちろん、売上構成比要件や3~5年間の付加価値向上要件などがありますので、一定の事業の成功は応募要件となっています。しかし、それだけでは説得力のある事業計画書と呼べません。

 どのような計算式で売上を算出しているのか?どのような損益構成で利益を算出しているのか?審査員にこのような疑問を持たせない事業計画が必要です。国から税金を使って支援するにあたって、費用対効果が良く分からない事業に補助金を出すことは好ましくありません。審査員を納得させる材料(積算根拠)を提供しましょう。

 とはいえ、これだけでは不十分です。事業計画の各年の損益を算出できたら、今度は補助事業での投資が何年で回収可能かを記載しましょう。投資回収の期間は短いに越したことはありませんが、現実的でない数字を算出することは逆効果です。審査員は数多くの経験を有する中小企業診断士である場合が多いため、非現実的な数値は見抜かれてしまうだけでなく、事業計画の信頼性も損なってしまい、不採択となる可能性が高まります。

 補助事業をしっかりと検討し、細かい数値の積み上げで説得力のある積算根拠を明記して補助事業の成功をアピールしましょう。

体制面の充実度・財務面の安全性を説明する

 事業の成功には、その事業計画を問題なく実施できる体制が必要です。人材がいなければ事業は動きませんし、人材がいても事業の実現に必要な能力が備わっていなければ成功は難しいでしょう。事業再構築補助金の審査項目においては、(2)事業化点①には次のとおり記載されています。

① 本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状 況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。

人材・能力面に加えて、財務面での安全性と資金調達の実現性にも言及されており、この部分の記載が必要なことも分かります。流動比率などの短期的な安全性だけでなく、自己資本比率などの長期的な安全性や、月商に対する現預金の比率なども説明し、自己資金または金融機関からの融資などで補助事業に要する資金を用意できることを明示しましょう。

対象となる市場の動向・顧客獲得方法を詳細に記載する

 設備の導入などで商品やサービスを提供できる体制が整ったとしても、その販売先・提供先である顧客を獲得できなければ、事業は成り立ちません。審査項目(2)事業化点②にも、次の記載があります。

② 事業化に向けて、競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮するとと もに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。 市場ニーズの有無を検証できているか。

 市場ニーズのない事業はそもそも売上につながりませんし、ニーズがあっても十分な市場規模がなければ投資回収もままなりません。また、市場の動向を把握していなければ、将来を見通した計画はつくれませんし、もちろん実行もできません。

 市場ニーズを既存の事業者や業界誌、インターネットなどから情報収集し、統計データなどをもとに市場規模や将来の動向などで根拠づけをしましょう。市場規模は経済産業省や総務省等の統計データ、(株)帝国データバンクや(株)矢野経済研究所など民間の調査機関のデータをインターネットなどから集めましょう。これらを記載すれば事業計画書の説得力は大きく高まります。

まとめ

 いかがでしたか?採択される事業再構築補助金の事業計画を策定するためには、しっかりとポイントを押さえたうえで、具体的かつ有効な取り組みを考え抜く必要があります。
 とはいえ、日々の経営で忙しい経営者が直接これを実行することは難しいのが現状です。当社にご相談いただければ、実績豊富な中小企業診断士などのコンサルタント事業計画の策定を力強くサポートします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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