我が国はウィズコロナの下、社会経済の正常化が進展する一方、原材料価格の上昇や円安の影響等によるエネルギー・食料品等の価格上昇が国民生活・事業活動に大きな影響を及ぼしています。また、世界規模の物価高騰がみられる中、各国・地域における金融引締めの影響などから世界的な景気後退懸念が高まっています。
こうしたなか、政府は10月28日、物価高・円安への対応、構造的な賃上げ、成長のための投資と改革に向けた「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を閣議決定しました。

出典:物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策 概要

財政支出39兆円(事業規模 71.6兆円)の経済対策は、新しい資本主義のもとで行う「物価高・円安への対応」、「構造的な賃上げ」、「成長のための投資と改革」を重点分野とした総合的な対策となっています。ここでは、その中でも中小企業等に関連した項目をピックアップしています。

※全体像については別ページにて掲載

Ⅰ 物価高騰・賃上げへの取組

【エネルギー・食料品等の価格高騰により厳しい状況にある生活者・事業者への支援】
•電力料金の激変緩和事業(家庭に対しては、23年度春初頭にも想定される電気料金の上昇による平均的な引上げ額を実質的に肩代わりする額を支援)都市ガス料金の激変緩和事業(料金の上昇による負担の増加に対応する額を支援)燃料油価格の高騰の激変緩和事業(23年1月以降も補助上限を緩やかに調整しつつ実施)

【継続的な賃上げの促進・中小企業支援】
◆賃上げの促進
•来春の賃金交渉では、物価上昇をカバーする賃上げを目標
•中堅・中小企業等の賃上げ支援大幅拡充(事業再構築補助金、中小企業生産性革命事業等)、同一労働同一賃金遵守徹底
◆中小企業等の賃上げ環境整備
•適切な価格転嫁に向けた整備(公取委等の体制強化、独禁法・下請代金法のより厳正な執行等)
•弾力的かつ複数年度にわたって継続的な事業再構築・生産性向上への挑戦・円滑な事業承継・引継ぎを強力に支援
•信用保証制度において、借換え需要に加え、新たな資金需要にも対応する制度を創設

事業再構築補助金など、今後は中小企業等向け補助金において賃上げのインセンティブを一段と強化するなどの手段を活用して、賃上げを促進することが窺えます。

Ⅱ 円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化

【コロナ禍からの需要回復、地域活性化】
◆観光立国の復活

•インバウンド消費年間5兆円超の速やかな達成に向けた集中パッケージ推進、新たな「観光立国推進基本計画」策定
•観光地・観光産業の再生・高付加価値化、戦略的な訪日プロモーション、コンテンツ海外展開促進、国内観光活性化
◆地域活性化
•エンターテイメントや商店街等の各種イベントへの支援等による需要喚起
•インフラの戦略的・計画的整備、コンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくり、都市再生、条件不利地域の振興

【円安を活かした経済構造の強靱化】
◆企業の国内投資回帰と対内直接投資拡大

•サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい重要な製品・部素材等の国内生産拠点整備支援、対内直接投資促進
◆中小企業等の輸出拡大
•「新規輸出中小企業1万者支援プログラム」の推進

円安により、これまで輸出に積極的ではなかった中小企業等に対して「新規輸出中小企業1万者支援プログラム」を通じた輸出を支援し、海外市場を開拓していく契機を獲得することが窺えます。

Ⅲ「新しい資本主義」の加速

【「人への投資」の抜本強化と成長分野への労働移動:構造的賃上げに向けた一体改革】
◆人への投資の強化と労働移動の円滑化、多様な働き方などの推進、人的資本に関する企業統治改革

•「人への投資」の施策パッケージを5年1兆円へ拡充(企業間・産業間の労働移動の円滑化、在職者のキャリアップのため訓練から転職まで一気通貫で支援、労働者のリスキリング支援)、労働移動円滑化の指針を来年6月までに策定
•非財務情報開示の充実、生産性を高める働き方改革、多様で柔軟な働き方を選択できる環境整備、就職氷河期世代支援

構造的賃上げと成長力強化のために、人への投資に着目し成長分野への投資を推進。そのため、人への投資の支援パッケージを5年間で1兆円に拡充し、スキルアップと成長分野への労働移動を同時に進めていくことが窺えます。

【成長分野における大胆な投資の促進】
◆スタートアップの起業加速

•5年10倍増を視野に5か年計画策定。立上げ期の人的・ネットワーク面での支援(未踏事業拡大、若手人材の海外派遣、海外における起業家育成拠点創設、1大学1IPO運動、グローバル・スタートアップキャンパス構想具体化等)、成長に向けた資金供給強化と事業展開・出口戦略の多様化(研究開発型スタートアップへの支援、SBIRの拡充等)
◆GX(グリーン・トランスフォーメーション)
•GI基金拡充、革新的GX技術の研究開発促進、アジア・ゼロエミッション共同体構想推進
•成長に資する施策は、足元のエネルギー価格高騰への対策の必要性も踏まえつつ、年末までにまとめる「10年ロードマップ」に基づく政府投資の一環として先行実施
◆DX(デジタル・トランスフォーメーション)
•Beyond5G(6G)研究開発、マイナンバーカード普及促進(健康保険証等と一体化加速等)、中小企業DX、医療・介護DX(オンライン資格確認用途拡大等)、教育DX、デジタル田園都市国家構想推進、日米共同の次世代半導体技術開発

スタートアップ、GX、DXにおいては今後も推進していくことが窺えます。脱炭素社会に向けたGXの取り組みについては自社で使用するエネルギー使用量削減やSDGsへの意識の高まりによる企業ブランディングにつながるかもしれません。また、中小企業において遅れが多いというDX導入への支援も今後事業課題解決や業務改善促進にもなり得るでしょう。

まとめ

コロナ禍による生活様式の変化に伴い、これまで様々な影響を私たちは受けてきました。その後物価・原油価格高騰に伴う実質所得の低下や消費への影響、企業収益の減少などにより設備投資や事業成長不足など様々な影響は今後も懸念されます。
閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」では財政支出の数値からも物価高騰・賃上げへの取組の分野が大きくなっています。
こうした動きは、これまで展開されてきた補助金に対しても加点項目や要件として付加されるかもしれません。

また、円安を背景にした新規輸出に挑戦する中小企業1万者支援の推進プログラムなど、中小企業の海外市場開拓の機会創造など、中小企業等への支援は引き続き強化されることが窺えます。
こうした施策を活用し、コロナや物価・原油価格高騰の影響からのV字回復を図っていきましょう。

※政府は、今後裏付けとなる2022年度第2次補正予算案を編成し、年内の成立を目指す考えを示しています。

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