インボイス制度とは
インボイス制度とは、消費税の適正な申告を推進し、税務行政の効率化を図ることを目的として導入された制度です。事業者間の取引において、課税事業者が取引相手に交付する適切な税額計算書類をインボイスといいます。インボイスには取引内容や税額などが正確に記載されることで、事業者の消費税の確定申告が容易となり、仕入税額控除の適正化が推進されます。これによって事業者のコンプライアンス強化と税務行政全体の効率化が期待されています。
インボイス制度の定義
インボイス制度は、事業者間の商品やサービス取引において、対価や税額など必要な事項を記載した書類を取引相手に交付する制度です。この書類をインボイスといいます。インボイスには取引日や内容、対価、税額が正確に記され、5年間適切に保存が求められます。これにより事業者の消費税申告の適正化を推進し、申告漏れや税額控除漏れを防ぐことができます。これにより、税務行政コストの削減と税収の安定化につながることが期待されています。
インボイス制度の目的
インボイス制度は、消費税の適正な申告を推進し、ひいては税務行政コストの削減と税収の安定化を図ることを目的としています。取引内容を正確に記載したインボイスの交付により、事業者の消費税申告漏れが防止でき、仕入控除も適正化できます。電子インボイスの保存による行政効率化や、インボイス情報の税務調査での活用が可能となります。これらに加え、インボイス制度は消費税の適用拡大における軽減税率の適正実施の確保にも資する制度と位置付けられています。事業者にとっては、消費税申告コンプライアンス強化と税務リスク低減が期待できるメリットの大きい制度といえます。
中小企業への影響
インボイス制度の導入により、法人は大きく「課税事業者」と「免税事業者」の2つに分類されます。それぞれの区分によって、インボイス制度による影響は異なります。
事務負担の増加
課税事業者
課税事業者は、基準期間における課税売上が1,000万円を超えるため、消費税の納税義務があります。インボイス制度導入後は、取引相手に適格請求書を発行する必要があります。適格請求書には、消費税額や適用税率などの記載が義務付けられているため、帳簿や請求書の作成に手間がかかります。また、適格請求書を発行できる事業者であるかどうかを判断する必要もあるため、取引先の調査に時間や手間がかかることも考えられます。
免税事業者
免税事業者は、基準期間における課税売上が1,000万円未満のため、消費税の納税義務を免除されています。インボイス制度導入後は、取引相手から適格請求書の交付を受けることができないため、仕入税額控除が認められなくなります。仕入税額控除が認められなくなると、消費税の負担が増加する可能性があります。また、取引先からの信頼を失う可能性もあるため、今後の経営に影響を与える可能性があります。
システム対応の必要性
インボイス制度の導入により、適格請求書の記載事項が拡大され、電子化が義務化されます。そのため、会計システムや請求書発行システムなどのシステム対応が必要となります。
課税事業者
課税事業者は、適格請求書を発行する必要があります。適格請求書には、以下の記載事項が義務付けられています。
- 取引年月日
- 取引金額
- 税率
- 消費税額
- 取引先の名称および登録番号
これらの記載事項を正確に入力するためには、会計システムや請求書発行システムの改修や導入が必要となる可能性があります。また、電子化が義務付けられているため、紙の請求書を電子化するためのシステムも必要となります。
免税事業者
免税事業者は、適格請求書の交付を受けることができないため、仕入税額控除が認められなくなります。仕入税額控除が認められなくなると、消費税の負担が増加する可能性があります。そのため、適格請求書を発行できる取引先を把握しておくことが重要となります。
また、免税事業者も、適格請求書の発行や受領に関する書類の保存が義務付けられています。そのため、電子帳簿保存法に対応したシステムを導入しておくことで、書類の保存にかかる手間を軽減することができます。
システム対応のポイント
インボイス制度に対応したシステムを導入する際は、以下のポイントが重要となります。
- 適格請求書の記載事項を正確に入力できる機能
- 電子化に対応した機能
- 電子帳簿保存法に対応した機能
また、システム導入に当たっては、自社の業務フローやニーズを踏まえて、最適なシステムを選択することが大切になります。
対策のポイント
インボイス制度は適格請求書の記載事項が拡大され、電子化が義務化されるなど、取引先とのやり取りや帳簿の作成などに大きな影響を与えます。インボイス制度への対応を早めに進めることで、円滑な導入を実現し、経営の安定につなげることができます。
対策のポイントを3つの観点から解説していきます。
適格請求書発行への対応
課税事業者は、取引相手に適格請求書を発行する必要があります。適格請求書には、以下の記載事項が義務付けられています。
- 取引年月日
- 取引金額
- 税率
- 消費税額
- 取引先の名称および登録番号
これらの記載事項を正確に入力するためには、以下の対応が必要です。
- 会計システムや請求書発行システムの改修や導入
- 社内研修による従業員の教育
また、適格請求書の電子化が義務付けられているため、紙の請求書を電子化するためのシステムも必要となります。
取引先との制度調整
課税事業者は、取引相手が適格請求書を発行できる事業者であるかどうかを確認する必要があります。また、取引相手が適格請求書を発行できない場合、仕入税額控除が認められなくなるため、取引条件の見直しが必要になる可能性があります。
取引先との制度調整を行う際は、以下の点に注意しましょう。
- 適格請求書を発行できる事業者であるかどうかを事前に確認する
- 取引相手が適格請求書を発行できない場合、仕入税額控除が認められなくなることを説明する
- 取引条件の見直しが必要になる場合は、早めに交渉する
請求業務の見直し
適格請求書の記載事項は、従来の請求書よりも増えるため、請求業務の見直しが必要になる可能性があります。
請求業務の見直しを行う際は、以下の点に注意しましょう。
- 請求書の記載事項を正確に入力できるようにする
- 請求書の電子化を検討する
- 請求業務の効率化を図る
補助金制度の活用
会計システムや請求書発行システムの改修や導入には、多額の費用がかかると考えられます。
政府は、インボイス制度に対応できるツールを導入する際に使用できる補助金を創設しました。2023年11月に発表された令和5年度補正予算案を基に、これらの補助金について紹介します。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する際に、導入費用の一部を補助する制度です。令和5年度補正予算案では、インボイス制度に対応したツールの導入を支援する「デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)」が新たに創設されました。
概要はこちらから
この枠では、インボイス制度に対応した会計ソフトや受発注ソフトの導入費用が、最大350万円の補助を受けることができます。また、大企業も申請が可能で、クラウド利用料の最大2年分の補助も受けることができます。
具体的な対象となるツールとしては、以下のようなツールが考えられます。
- 会計ソフト
- 受発注ソフト
- 請求書発行ソフト
- 電子帳簿保存法対応ソフト
- 電子決済システム
IT導入補助金を利用することで、インボイス制度への対応にかかる費用を抑えることができます。
IT導入補助金について別途記事にて詳細をご紹介しています。
併せてチェックしてみてください!
事業環境変化対応型支援事業
インボイス制度の導入やエネルギー価格・物価の高騰、最低賃金引き上げ等の様々な事業環境変化の影響を受ける中小企業・小規模事業者への相談や各種支援施策の活用を促すべく、中小企業団体等と連携した支援体制を強化することを目的とした支援事業です。
詳細は中小企業庁当該ホームページ(こちら)よりご確認いただけます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、中小企業・小規模事業者等が、経営計画に基づいて販路開拓や業務効率化等の取組を行う際に、その経費の一部を補助する制度です。令和5年度補正予算案では、インボイス制度に対応したツールの導入を支援する「インボイス特例」が新たに創設されました。
この特例では、インボイス制度に対応したシステムの導入費用が、最大250万円の補助を受けることができます。また、免税事業者から適格請求書発行事業者へ転換する事業者の場合は、各枠の補助上限が一律50万円上乗せされます。
適格請求書発行ツール
適格請求書は、従来の請求書に記載事項が追加され、電子化も義務付けられます。適格請求書を発行するためには、会計ソフトや請求書発行システムの改修や導入が必要となります。その際、適格請求書の発行に対応したツールを導入することで、スムーズな対応が可能になります。
発行ツールの選定ポイント
機能性
適格請求書発行ツールを選ぶ際には、まず「機能性」を重視しましょう。適格請求書に必要な記載事項を正確に入力できる機能が搭載されているかどうかは、最も重要なポイントです。
具体的には、以下の記載事項を入力できるかどうかを確認しましょう。
- 取引先の適格請求書発行事業者としての登録番号
- 品目ごとの適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額
- 取引年月日
- 取引金額
- 商品またはサービスの名称
- 数量 単位 金額
また、適格請求書の電子化が義務付けられているため、電子ファイルで作成できる機能も必要です。
使いやすさ
「使いやすさ」も重要なポイントです。操作が簡単で、従業員が使いこなせるかどうかを確認しましょう。
具体的には、以下の点を確認しましょう。
- 画面や操作方法がわかりやすく、直感的に操作できるか
- よく使う機能はすぐに呼び出せるか
- 操作方法や使い方に関するサポートが充実しているか
コスト
「コスト」も考慮しましょう。導入や運用にかかる費用が適切かどうかを確認しましょう。
具体的には、以下の点を確認しましょう。
- 初期費用や月額費用、更新費用など
- サポート費用
- データ移行費用
また、補助金制度を利用することで、導入費用を抑えることができる場合があります。
その他のポイント
この他にも、以下のポイントも考慮してみてください。
- 自社の業務フローや規模に合っているか
- セキュリティ対策が万全か
- 将来的な拡張性があるか
適格請求書発行ツールを選ぶ際には、これらのポイントを押さえて、自社に最適なツールを選びましょう。
活用方法とメリット
適格請求書の発行業務の効率化
適格請求書発行ツールを活用することで、手作業による入力や確認が不要になります。そのため、以下のようなメリットが得られます。
- 入力や確認にかかる時間と労力を削減できる
- ミスの防止につながる
- 請求書の発行作業を自動化できる
例えば、適格請求書発行ツールでは、取引先情報や商品・サービスの情報を事前に登録しておくことで、請求書の作成時に自動的に入力することができます。また、適格請求書に必要な記載事項をチェックする機能も搭載されているため、ミスの防止にもつながります。
仕入税額控除の漏れの防止
適格請求書の記載事項が正確であれば、仕入税額控除の漏れを防止できます。そのため、以下のようなメリットが得られます。
- 税務調査時の指摘を防ぐことができる
- 仕入税額控除の適用範囲を拡大できる
適格請求書には、従来の請求書にはない記載事項が追加されています。適格請求書発行ツールを活用することで、これらの記載事項を正確に入力することができます。
請求業務の改善
請求書の電子化により、請求業務の改善が図れます。そのため、以下のようなメリットが得られます。
- 請求書の作成や送付にかかる時間とコストを削減できる
- 請求書の管理が容易になる
- 請求書の紛失や遅延を防止できる
適格請求書は、電子ファイルで作成し、電子的に送付する必要があります。適格請求書発行ツールを活用することで、請求書の作成や送付を効率化することができます。また、請求書の管理も容易になるため、請求書の紛失や遅延を防止することができます。
ツールの紹介
ツールについて3つの観点からご紹介します。
会計ソフト:会計ソフトの中には、適格請求書の発行に対応した機能が搭載されているものがあります。
請求書発行ソフト:請求書の発行に特化したソフトもあります。
クラウド型サービス:クラウド型サービスでは、インターネットに接続するだけで利用できます。
(受領側)
マネーフォワード クラウドインボイス | 公式サイト(こちら) |
invox受取請求書 | 公式サイト(こちら) |
バクラク請求書 | 公式サイト(こちら) |
invoiceAgent | 公式サイト(こちら) |
TOKIUMインボイス | 公式サイト(こちら) |
(発行側)
まとめ
適格請求書発行ツールを活用することで、適格請求書の発行業務の効率化や、仕入税額控除の漏れの防止、請求業務の改善などのメリットが得られます。適切なツールを選ぶことで、より効果的に適格請求書発行業務を効率化することが期待できます。