中小企業の生産性向上や持続的な賃上げを推進するため、令和6年度補正予算では「事業承継・M&A補助金」が措置される予定です。本補助金では、事業承継に伴う設備投資や専門家活用費用、M&A後のPMI(経営統合)のための費用、廃業に伴う原状回復費用など、さまざまな取り組みを幅広く支援します。

本記事では、補助金の概要や支援枠、申請の流れなどを整理しました。詳細は、今後公表される公募要領や事務局サイト等をご確認のうえ、ご検討ください。


事業承継・M&A補助金とは?

令和6年度補正予算による本補助金は、事業承継やM&Aを契機とした設備投資・専門家活用費用などを支援するものです。具体的には、以下のような取り組みが支援対象となる予定です。

  • 5年以内の事業承継(親族内承継・従業員承継)を予定している場合の設備投資
  • M&Aを行う際のフィナンシャルアドバイザー(FA)や仲介業者への費用、表明保証保険料
  • M&A後のPMI(経営統合)に必要な専門家費用や設備投資
  • 事業承継やM&A検討・実施に伴う廃業等に要する費用(在庫処分費、原状回復費等)

さらに、一定の要件を満たした場合は補助上限の引き上げ(最大1,000万円まで)や補助率2/3の適用など、賃上げや規模要件に応じて優遇を受けることも可能とされています。


支援枠の概要

今回の補助金では、大きく4つの枠が用意される予定です。
なお、「廃業・再チャレンジ枠」は、他の枠との併用が可能です。

1. 事業承継促進枠

  • 対象者
    • 5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している中小企業
  • 補助上限
    • 800万円~1,000万円
    • 一定の賃上げを実施する場合は上限1,000万円へ引き上げ
  • 補助率
    • 1/2 または 2/3(小規模事業者の場合)
  • 対象経費例
    • 設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費 など

2. 専門家活用枠

  • 対象者
    • M&Aを実施する際の専門家活用費用を計上する中小企業(売り手・買い手両方)
  • 補助上限
    • 買い手支援類型:600~800万円(+デューデリ費用として200万円加算可能な場合あり)、または2,000万円(「100億企業要件」を満たす場合)
    • 売り手支援類型:600~800万円(赤字・物価高影響等で営業利益率低下の要件を満たす場合、補助率が優遇)
  • 補助率
    • 1/3・1/2 または 2/3(小規模要件・赤字要件等により異なる)
  • 対象経費例
    • 専門家謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料(表明保証保険料など)
    • FA・仲介費用(「M&A支援機関登録制度」に登録された業者に限る)

3. PMI推進枠

  • 対象者
    • M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定があり、PMI(経営統合)を行う中小企業
  • 補助上限
    • PMI専門家活用類型:150万円
    • 事業統合投資類型:800~1,000万円(賃上げ実施で1,000万円上限)
  • 補助率
    • PMI専門家活用類型:1/2
    • 事業統合投資類型:1/2 または 2/3(小規模事業者の場合)
  • 対象経費例
    • (PMI専門家活用)謝金・旅費・外注費・委託費など
    • (事業統合投資)設備費、外注費、委託費など

4. 廃業・再チャレンジ枠

  • 対象者
    • 事業承継やM&Aの検討・実施等に伴い廃業を行う中小企業
  • 補助上限
    • 150万円(他枠と併用申請の場合は、各枠の補助上限に加算)
  • 補助率
    • 1/2 または 2/3(小規模事業者等の場合)
  • 対象経費例
    • 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用(併用申請の場合のみ)

申請・補助事業の流れ

本補助金は、公募開始→交付決定→補助事業の実施→実績報告→補助額の確定→補助金交付という流れです。主なスケジュールは以下のとおり(予定)になります。

  1. 事前準備・課題の把握
    • 公募要領公開前に、補助事業でやりたいこと・必要な経費などを洗い出し
  2. 公募開始~交付決定
    • 公募要領が公開され、申請受付開始
    • 申請締切後、審査・採択結果を経て交付決定
  3. 補助事業期間内での実施・支払い
    • 交付決定後に契約・発注・支払いを行う経費が補助対象
    • 事業完了後、実績報告書を提出
  4. 補助金の確定・交付
    • 実績報告書をもとに検査・経費内容確認
    • 交付額が確定し、補助金が支払われる

注意点

  • 交付決定前に発注・支払いした経費は補助対象外となる可能性があります。
  • 確定検査の結果、交付決定額が減額される場合もあります。

また、補助金の交付後も、3~5年間の事業計画実施期間が設けられ、計画実施状況の報告等が求められる場合がありますのでご注意ください。


チラシダウンロード・公募サイトについて

令和6年12月時点の情報をまとめたチラシは、以下よりダウンロード可能です(予定)。
※PDFリンクやダウンロード先のURLを挿入してください※PDFリンクやダウンロード先のURLを挿入してください※PDFリンクやダウンロード先のURLを挿入してください

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_m_and_a.pdf


お問い合わせ先

  • 補助金事務局
    令和6年度補正予算の成立後、事務局の運営体制が決定次第、連絡先・窓口が公表される予定です。
  • 中小機構(中小企業基盤整備機構)
    令和6年度補正予算での事業承継・M&A支援に関して、詳細が公表され次第ご案内予定です。

まとめ

「事業承継・M&A補助金」は、後継者不在や円滑な経営統合に悩む中小企業にとって非常に心強い支援策となります。廃業費用やPMI、専門家費用など、これまで補助対象になりにくかった経費も多く含まれるため、M&Aや事業承継を検討する方はぜひ活用をご検討ください。

ただし、制度の詳細や公募開始時期、要件などは今後変更される可能性があります。最新情報は、補助金事務局や中小機構等の公式サイトを必ずご確認ください。