中小企業・小規模事業者を取り巻く経営環境は、物価高や人手不足など厳しさを増しています。
国としては、価格転嫁の適正化や資金繰りの支援、省力化投資のサポートなど、多角的な施策を打ち出しています。 ここでは、令和6年度補正予算と令和7年度当初予算案を中心に、中小企業向けの主な支援策を分かりやすく整理しました。

1. 価格転嫁対策

物価高が続く中、下請事業者が適切に価格を転嫁できるよう、取引の公正性を高める施策が講じられています。

  • 中小企業取引対策事業【29億円 + 8.3億円】:価格交渉促進月間の実施、下請Gメンによる取引実態把握、下請法の厳正な執行等
  • 下請代金法の執行強化・指導・助言:企業名公表を通じた実効性向上
  • 「パートナーシップ構築宣言」の実効性向上
  • 官公需などにおける労務費等の価格転嫁徹底

2. 資金繰り支援

金利引下げや信用保証制度の拡充などにより、中小企業の資金繰りを安定させる施策が実施されています。

  • 中小企業資金繰り支援事業【223億円】:
    ・日本政策金融公庫補給金【153億円
    ・中小企業信用補完制度関連補助事業【39億円】など
  • 日本政策金融公庫の利子補給や保証制度などによる低金利融資
  • 公庫制度融資の賃上げ特例継続、成長志向の中小企業への支援拡充
  • 民間金融機関のプロパー融資と組み合わせた協調支援型保証制度の新設

3. 成長・生産性向上・省力化投資支援

持続的な賃上げに向け、中小企業の飛躍的成長や生産性向上、省力化投資を促すための補助金・事業が複数用意されています。

  • 中小企業生産性革命推進事業【3,400億円
    ・ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・M&A補助金など
  • 中堅・中小大規模成長投資補助金【1,400億円8.7億円】:
    人手不足等の課題に対応するための大規模設備投資を促進
  • 100億企業育成ファンド出資事業【30億円】:
    中小機構がファンドを組成し、売上高100億円超を目指す中小企業を支援
  • 成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)【123億円】:
    大学等と連携した研究開発の支援、イノベーション・プロデューサーを通じた技術革新
  • 中小機構による海外展開支援(越境EC含む)、グリーントランスフォーメーション対応支援 など

4. 事業承継・再編等を通じた変革の推進

経営者高齢化が進む中、事業承継を円滑化しつつ、M&Aや再編を契機に生産性向上や新しい挑戦を支援する施策です。

  • 中小企業活性化・事業承継総合支援事業【144億円 + 61億円】:
    ・事業承継・引継ぎ支援センター等による承継サポート
    ・事業承継・M&A補助金の活用
  • 後継者支援ネットワーク事業【4.0億円】:
    ・後継者同士の学び合いや新事業アイデアコンテスト開催

5. 小規模事業者支援・災害復旧支援

商工会・商工会議所等による伴走型支援や、災害からの復旧を支えるための補助金が盛り込まれています。

  • 小規模事業対策推進等事業【61億円】:
    ・巡回指導・窓口相談などを支援
  • 小規模事業者経営改善資金融資事業【30億円
  • 地方公共団体による小規模事業者支援推進事業【10億円 + 10億円】:
    ・販路開拓、生産性向上、災害復旧に向けた取組支援
  • 商店街等活性化支援事業:
    ・社会課題解決や地域の価値向上に向けた専門家伴走支援
  • なりわい補助金、グループ補助金など【213億円】:
    ・地震や豪雨による被災地域の早期復旧・復興支援

6. 経営相談体制・早期再生・再チャレンジ支援

経営の行き詰まりや環境変化に対応できるよう、中小企業活性化協議会や各種支援機関の体制を強化しています。

  • 事業環境変化対応型支援事業【112億円】:
    ・多様な経営課題への相談・伴走支援
  • 中小企業活性化・事業承継総合支援事業【144億円 + 61億円】(再掲):
    ・事業再生支援や事業承継・引継ぎ支援

7. 多様な経営課題への伴走・地域課題解決支援

よろず支援拠点などを通じた中小企業・小規模事業者のワンストップ支援、地域企業のネットワーク構築支援などの予算が計上されています。

  • 中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【34億円 + 20億円】:
    ・よろず支援拠点による経営相談や専門家派遣
  • 中堅・中核企業の経営力強化支援事業、地域の人事部支援事業【7.0億円】:
    ・地域企業群の人材確保・育成・定着を一体的にサポート
  • 中小企業実態調査委託費【21億円】:
    ・ゼブラ企業創出・育成のためのエコシステム調査・分析
    ・「100億企業」創出に向けた経営者ネットワーク調査など

8. 主な税制改正事項

中小企業の設備投資や事業承継を後押しするため、令和7年度を中心に以下のような税制改正が予定されています。

  • 地域未来投資促進税制(拡充・延長)
    10億円以上の設備投資への新措置追加、適用期限3年間延長
  • 事業承継税制(見直し)
    後継者の3年間の役員就任期間を特例措置に限り事実上撤廃
  • 中小企業投資促進税制(延長)
    設備投資を行った場合の税額控除または特別償却の適用を2年間延長
  • 法人税軽減税率(延長)
    年間800万円以下の所得に対する税率15%への軽減を2年間延長
  • 固定資産税の特例措置(拡充・延長)
    賃上げを表明する企業を対象に軽減率を最大1/4へ強化
  • 中小企業経営強化税制(拡充・延長)
    100億円企業を目指す中小企業向けに対象設備へ建物を追加
  • 中小企業防災・減災投資促進税制(延長)
    防災・減災に資する設備投資の特別償却適用を2年間延長

まとめ

令和6年度補正予算と令和7年度当初予算案では、中小企業が直面する物価高・人手不足などの厳しい状況を踏まえ、 価格転嫁対策や資金繰り支援をはじめ、成長を志向する企業への設備投資・研究開発支援、事業承継や小規模事業者の 伴走支援など、多角的な施策が用意されています。
これらの支援策を活用することで、事業の安定やさらなる成長、そして持続的な賃上げの実現につながるチャンスとなり得ます。自社の状況に合った制度・補助金の活用を検討してみてください。

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