製造業を中心に、多様な業種で生産性向上や品質向上に活用されている「ものづくり補助金」。現在、第13回目の公募が行われている人気の補助金です。
 特に近年では、歯科医院が活用することが増えていますが、この度の13回公募からは、状況が一変してしまいました。
 この度は、歯科医院に影響する変更の内容について、詳しくご説明していきます。

歯科医院は補助対象になるのか?

 まず最初に、そもそも「歯科医院は補助対象なのか?」という点について、整理していきましょう。結論から言いますと、個人事業主であれば補助対象になり得ます。実際に、過去に多くの歯科医院が採択を受けています。

 歯科医院が補助対象になる根拠は、公募要領の記載です。この中で、医療法人は補助対象にならないと明記されています。これは裏を返せば、「法人でない個人事業であれば、補助対象になる」ということです。
 ちなみに、医療法人と同様に、社会福祉法人補助対象外となっています。

イ 【中小企業者(組合関連)】
・「中小企業等経営強化法」第2条第1項に規定するもののうち、下表にある組合等に該当すること。
・該当しない組合や財団法人(公益・一般)、社団法人(公益・一般)、医療法人、社会福祉法人及び法人格のない任意団体は補助対象となりません。

ものづくり補助金 第13次締切分 公募要領より抜粋

 歯科医院自体が補助対象になることは上記のとおりですが、取り組み内容による大きな制限が発生しました。

歯科医院は事業内容によっては補助対象外?

 歯科医院がものづくり補助金を使う場合の取り組みの代表例が、CAD/CAM冠への対応です。これは、プラスチックにセラミックの粉を混ぜ合わせて作る、白い歯のようなものです。通常のプラスチックよりも強度を高められるメリットがあります。
 この製造工程を確立するため、口腔スキャンのCT装置と、CAD/CAM冠を作る3Dプリンター等を導入するパターンが、数多く採択されていました。
 この背景には、医療制度の改正による保険適用の範囲の拡大と、これに伴うニーズが高まりに対応したい、と考えた歯科医院が増えたというトレンドがありました。

 しかし、この「保険適用」が今後のものづくり補助金では、歯科医院にとっての最大のネックとなってしまいました。
 なんと、第13回公募からは、医療・介護など保険適用の事業は補助対象外である、と公募要領に明記されてしまったのです。具体的には、補助対象外となる事業の説明の中に、次のような記載が加わりました。

・(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が助成する制度との重複を含む事業。すなわち、テーマや事業内容から判断し、本事業を含む補助金、委託費と同一又は類似内容の事業(交付決定を受けていない過去の申請を除く)、及び公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等との重複がある事業。

ものづくり補助金 第13次締切分 公募要領より抜粋

 つまり、医療保険・介護保険の適用を受ける事業は、国からお金が流れている。その取り組みの後押しに、ものづくり補助金を交付するのは、税金の二重取り(重複)に該当するので補助対象外になってしまったのです。
 では、歯科医院は、ものづくり補助金を活用する方法は全くないのでしょうか?

歯科医院がものづくり補助金を使う道はある?

 公募要領の変更によって大きな制約を受ける歯科医院ですが、ものづくり補助金を活用できる場合もあります。それは、補助事業で取り組む内容が、「自由診療(保険適用外)」に限られる場合です。

 自由診療であれば、歯科医院が医療保険からお金を受け取ることはありません。そのため、税金の二重取りにはならないのです。例えばインビザラインでの美容のための歯科矯正を施すために使用する装置などは、補助対象になり得るでしょう。
 とはいえ、ものづくり補助金を活用する場合には、想定されるリスクを知っておく必要があります。

歯科医院のものづくり補助金活用で想定されるリスク

 ここまで、歯科医院がものづくり補助金を活用できるケースをご紹介しました。導入する機械装置の用途を限定することで、補助対象にはなり得ますが、次の3つのリスクがあることを、しっかりと認識しておきましょう。

①導入する装置を少しでも保険適用の治療等に使うと補助金返還となる
⇒公的医療保険の診察報酬を受ける取り組みは、補助対象外である旨が公募要領に明記されました。そのため、導入した機械装置の稼働時間の90%は自由診療に使うが、10%は保険適用の事業に使う、といった場合は問答無用で補助金返還となります。
 補助金で導入した機械装置は、事業計画書で記載した用途にのみ使用できます。つまり、当初の目的以外に使用したり、補助対象外事業に使用するのはご法度ということです。少しだけ違うことに使ったので、補助金返還も少しで良い、とはなりません。

②現在は自由診療の取り組みが将来的に保険適用になる可能性がある
⇒現在、保険適用の取り組みは補助対象外ですが、これは将来的にも同様です。事業完了後5年間の事業化状況報告の期間内に、補助金で取り組んだ自由診療の事業が、医療保険の制度の改正で保険適用になった場合には、補助金の返還義務が発生する可能性が非常に高くなります。
 明らかに審美系の取り組みでしたら、今後の保険適用の可能性は低いかもしれませんが、微妙なラインの場合は、補助金をもらった後も5~6年間は安心できない期間が続くことになりますので、注意が必要になります。

③個人事業主から法人化すると補助金返還となる
 この点については、この度の公募要領の改正前からのことですが、歯科医院の場合は個人事業主のみが補助対象となります。そのため、事業完了後5年間の事業化報告期間内に医療法人へと「法人成り」した場合には、補助金の何割かを国庫に返還する義務が発生しますので注意しておきましょう。

まとめ

 いかがでしたか?ものづくり補助金では歯科医院の申請が活発でしたが、この度の公募要領の変更は、この傾向を根底から覆す衝撃的なものでした。
 とはいえ、歯科医院がものづくり補助金を使う場合には、個人事業主の自由診療という道が残っています。リスクがあることも踏まえ、それを上回るメリットがありそうでしたら、制度に精通した専門家と連携したうえで、ご活用をご検討されてはいかがでしょうか。
 当社には、信頼できる実績豊富な中小企業診断士などのコンサルタントが多数在籍しており、補助金採択・事業の成功を力強くサポートします。
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