従業員の健康への投資を通じて、人材の定着と企業の成長を目指しませんか?
厚生労働省の「人材確保等支援助成金〈健康づくり制度〉」は、まさにそのための制度です。
「人間ドックなど法定外の健康診断を導入したいが、費用がネック…」という中小企業でも、この助成金を活用することで、健康経営への第一歩を踏み出しやすくなります。
この記事では、令和7年度から内容が大きく変更された本制度について、公式サイトの情報に基づき、制度の仕組み・助成額・申請から受給までの全ステップを正確に解説します。

人材確保等支援助成金〈健康づくり制度〉とは?

厚生労働省が管轄する「人材確保等支援助成金」の中の、「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」に含まれる具体的な取り組みの一つです。
事業主が、労働安全衛生法で定められた法定健康診断に加えて、がん検診や腰痛健康診断などの法定外健康診断制度を新たに導入し、実際に従業員に受診させ、その取り組みの結果として1年後の離職率を低下させた場合に助成金が支給されます。

支給額(令和7年度版

令和7年度制度では、制度導入と離職率低下目標の達成をもって、一括で支給されます。過去の制度にあった「制度導入助成」と「目標達成助成」という2段階の支給体系は廃止されていますのでご注意ください。

  • 基本額: 20万円
  • 賃金要件を満たす場合: 25万円に増額
    ※賃金要件とは、制度導入の実施期間中に、対象労働者の賃金を5%以上引き上げるなどの取り組みを指します 。  

複数の雇用管理制度(例:賃金規定制度、メンター制度など)を同時に導入した場合、コース全体での上限額(80万円、賃金要件を満たす場合は100万円)まで受給が可能です 。  

対象となる取り組みと費用

助成対象となるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

対象となる健康診断

胃がん検診、子宮がん検診、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、腰痛健康診断のうち、いずれか1つ以上を導入すること 。

就業規則への明記

導入する制度を就業規則に明確に規定すること。

費用負担

受診費用の半額以上を会社が負担すること(半額未満の負担は対象外)。

対象労働者

原則として、事業所の「通常の労働者」全員を対象とすること。
※「通常の労働者」とは、週所定労働時間が30時間以上の正社員や契約社員などを指します。週30時間未満のパートタイム労働者を含めない設計も可能です。

申請から受給までの全ステップ(所要期間:約2年)

計画から受給までには長い期間を要するため、余裕を持ったスケジュール管理が不可欠です。

ステップ時期主な実施内容・提出書類
1. 計画の作成・認定制度導入開始の6か月~1か月前・雇用管理制度等整備計画書  ・健康づくり制度概要票 などを本社所在地の管轄労働局へ提出し、認定を受ける。
2. 制度の導入・運用計画期間(3か月~1年)・就業規則を改定し、労働基準監督署へ届出 ・制度について従業員へ周知 ・実際に健康診断を実施し、記録を保管
3. 評価期間計画期間終了後、12か月間・この1年間の離職率を算定し、目標を達成できたか評価する 。  
4. 支給申請評価期間終了後、2か月以内・支給申請書 ・離職率の算定根拠資料 ・健康診断の領収書 等を労働局へ提出する。
5. 審査・受給申請後、数か月・労働局による審査を経て、助成金が支給される。

最重要ポイント:離職率の低下目標

助成金を受給するための最も重要な要件が、この離職率低下目標の達成です。目標値は事業所の従業員数(雇用保険一般被保険者数)によって異なります 。

従業員10人以上

画提出前1年間の離職率よりも、評価期間1年間の離職率を1ポイント以上低下させる。

従業員9人以下

評価期間1年間の離職率が、計画提出前1年間の離職率を上回らないこと(同率または低下で可)。

離職率は、(評価期間中の離職者数 ÷ 期間初日の在籍者数) × 100 の式で算出され、ハローワークが発行する書類などで客観的に確認されます 。  

よくある質問

Q. 人間ドック以外でも対象になりますか?

A.はい。がん検診や腰痛健診など、法定外健康診断であれば対象です。複数のメニューを用意し、従業員が選択できる制度にしても問題ありません。

Q. パート・アルバイトも対象にする必要がありますか?

A.週所定労働時間が30時間未満の短時間労働者は、制度の対象に含めなくても構いません。正社員や週30時間以上勤務の契約社員といった「通常の労働者」が対象となります。

Q. 離職率の計算が難しそうです。

A.雇用保険の被保険者データに基づいて厳密に計算する必要があります。計算方法や必要書類について不明な点があれば、管轄の労働局や社会保険労務士にご相談ください。  

まとめ

令和7年度制度は成果報酬型

健康診断制度の導入だけでなく、1年後の離職率改善が必須です。

支給は一括で最大25万円

制度導入と目標達成後に、20万円(賃金要件を満たせば25万円)が一括で支給されます。

長期的な取り組みが必要

計画から受給まで約2年かかるため、継続的な視点が重要です。

専門家への相談が近道

就業規則の改定や離職率の正確な計算など、専門的な知識が求められるため、社会保険労務士への事前相談がスムーズな申請につながります。

最新情報は厚生労働省のウェブサイトや管轄労働局の案内を必ずご確認ください(記事執筆時点:2025年8月)。

人材確保等支援助成金雇用管理制度助成コース(健康づくり制度)助成金の活用事例集(厚生労働省):https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001074981.pdf