制度概要
中小企業生産性革命推進事業 事業承継・M&A補助金(16次公募)のうち、専門家活用枠「買い手支援類型(100億企業特例)」は、中小企業者等が事業再編・事業統合に際して利用するM&A専門家費用等を補助する制度である。実施機関は事業承継・M&A補助金事務局で、経済産業省・中小企業庁が所管する。
本類型は、将来の売上高100億円を目指して大胆な投資を進める中小企業者等を対象とし、通常の買い手支援類型(補助上限800万円)とは別枠で設けられている。補助上限は2,000万円で、補助率・雇用維持要件・返還規定等の点で通常類型と異なる。
同一公募回において、補助上限800万円の通常専門家活用枠(買い手支援類型・売り手支援類型)との併願申請は不可。本類型で不採択となった場合、通常枠への移行もできない。
補助額・補助率|最大2,000万円(廃業費別途300万円)
| 区分 | 補助上限額 | 補助率 | 補助下限額 |
|---|---|---|---|
| 買い手支援類型(100億企業特例) | 2,000万円 | 1,000万円以下の部分:1/2以内、1,000万円超〜2,000万円の部分:1/3以内 | 50万円 |
| 廃業費(併用申請時に加算) | 300万円 | 1/2以内 | — |
補助金の交付は補助対象事業完了後の精算払い(実費弁済)となる。交付申請時の補助額が補助下限額50万円を下回る場合は受け付けられない。
補助事業期間内に経営資源の引継ぎ(クロージング)が実現しなかった場合、補助上限額は300万円に変更される。この場合、原則デュー・ディリジェンス(DD)費用のみが補助対象経費として認められる。
廃業費については、関連する経営資源の引継ぎが補助事業期間内に実現しなかった場合は補助対象外となる。
補助上限額2,000万円の全額をデュー・ディリジェンス費用のみで申請する場合、DD1種につき、対象経費に補助率を掛け合わせた額で200万円が上限となる。
対象者
中小企業者等の定義(業種別資本金・従業員基準)
| 業種分類 | 資本金基準 | 従業員数基準 |
|---|---|---|
| 製造業その他(注1) | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
| サービス業(注2) | 5千万円以下 | 100人以下 |
(注1)ゴム製品製造業(一部除く)は資本金3億円以下または従業員900人以下。
(注2)ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下または従業員300人以下。旅館業は資本金5千万円以下または従業員200人以下。
業種制限なし(全業種が対象)。資本金または従業員数のいずれか一方の基準を満たせばよい。個人開業医、農業法人、個人農家も要件を満たせば対象に含まれる。
対象外となる中小企業者等
- 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有される法人
- 直近3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等
- 発行済株式総数の1/2以上を同一の大企業が所有している中小企業者(みなし大企業)
- 発行済株式総数の2/3以上を大企業が所有している中小企業者
- 大企業の役員または職員が役員総数の1/2以上を占めている中小企業者
- みなし大企業が全株式を保有する中小企業者、または役員総数の全てがみなし大企業役職員で占められている中小企業者
- 親会社が議決権の50%超を有する子会社が存在する場合、親子会社はみなし同一法人として一方のみ申請可(個人が複数法人の議決権50%超を保有する場合も同様)
- 代表者が同じ法人は同一法人とみなし、1社のみ申請可
- 社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、各種組合、法人格のない任意団体
申請者固有の要件(17項目のうち主要項目)
- 日本国内に拠点または居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること
- 法人の場合、申請時点で設立登記および3期分の決算・申告が完了していること
- 個人事業主の場合、開業届・青色申告承認申請書を提出した日から5年が経過していること
- 地域経済に貢献している(または貢献する予定の)中小企業者等であること
- 反社会的勢力でなく、反社会的勢力との関係を有しないこと
- 経済産業省および中小企業基盤整備機構から補助金交付等停止措置または指名停止措置が講じられていないこと
- 過去の「経営資源引継ぎ補助金」または「事業承継・引継ぎ補助金」の補助金受給者においては、期日までに事業化状況報告を適切に実施していること
- 申請時点から過去18か月の間に中小企業庁所管の補助金に申請した内容について、賃上げ加点の要件等が未達成の場合、正当な理由が認められない限り大幅に減点されることを了承していること
- FA・M&A仲介費用を補助対象経費とする場合、「M&A支援機関登録制度」に登録されたFA・仲介業者を利用していること
申請単位
- 同一の者による複数申請は不可(原則1申請のみ)
- 代表者または支配株主が同一である申請者による複数申請は不可
- 同一公募回での通常専門家活用枠(補助上限800万円)との重複申請は不可
対象事業・対象経費
補助対象となる事業の要件
補助対象は、承継者(買い手)による事業再編・事業統合に伴うM&Aで、以下の要件をすべて満たすものに限られる。
- シナジー効果の要件:水平型(既存技術と関連性の高い製品・サービスを類似市場へ)、垂直型(川上・川下等の市場への投入)、集中型(異なる市場への投入)のいずれかのシナジーが見込まれること。申請書にシナジー効果とその根拠を整理して提出すること
- 地域経済牽引:事業再編・統合後に地域の雇用をはじめ地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること
- DD実施義務:補助対象経費の計上有無を問わず、デュー・ディリジェンス(DD)を実施すること
- 最低譲渡価額:承継者から被承継者に支払われる最低譲渡価額が5億円以上であること(実績報告時の最終契約書およびクロージング証憑等で確認)
- 100億宣言:公募申請時に、補助事業者の「100億宣言」が「100億企業成長ポータル」サイト上で公表されていること
- 雇用維持要件:承継者は被承継者の従業員の雇用を3年間維持すること(従業員都合等、承継者の責によらない場合を除く)。会社都合による雇用未維持が確認された場合、従業員数の減少率に応じて補助金の返還を求める
- 国内実施:日本国内において補助事業を実施すること
対象外となる事業・M&Aの例
- グループ内の事業再編に相当する場合
- 物品・不動産等のみの売買に相当する場合
- 親族間の事業承継に相当する場合
- 取引価格の合理性が確認できない場合(補助対象経費に比して低額等)
- 事業譲渡において有機的一体な経営資源(設備・従業員・顧客等)の引継ぎが行われていない場合
- 株式譲渡後に承継者が保有する議決権が過半数に満たない場合
- 休眠会社や事業の実態がない会社のM&A
- 公序良俗に反する事業、風俗営業等の規制対象事業
- 国(独立行政法人を含む)の他の補助金・助成金を活用する事業(同一の補助対象経費への重複受給)
不動産売買とみなされる例(補助対象外)
- 不動産売買契約書のみを最終契約書として締結する場合
- 不動産および取引契約の引継ぎのみで、常時使用する従業員5名程度以上の引継ぎを伴わない場合
- 事業を営んでいない個人または個人事業主から不動産のみを買収する場合
- 空き家(廃墟・相続物件等を含む)のみを買収・売却する場合
- 賃貸物件(賃貸物件に紐づく契約を含む)のみを買収・売却する場合
- 補助対象経費が不動産売買に係る経費のみである場合
M&Aの形態(対象類型)
| 申請者区分 | 対象M&A形態 |
|---|---|
| 承継者(法人) | 株式譲渡、第三者割当増資、株式交換、吸収合併、吸収分割、事業譲渡 |
| 承継者(個人事業主) | 株式譲渡、第三者割当増資、事業譲渡 |
補助対象経費の区分
- 謝金:補助対象事業の遂行に必要な専門家等への謝礼
- 旅費:補助対象事業に係る旅費
- 外注費:補助対象事業の一部を外部へ委託する費用
- 委託費:FA業務・M&A仲介業務に係る相談料・着手金・中間報酬・成功報酬等。ただしFA・仲介費用は「M&A支援機関登録制度」登録業者によるものに限る
- システム利用料:M&Aマッチングサイト等の登録料・利用料・成約手数料(プラットフォーマーが付加的に提供するFA・仲介サービスは委託費に区分)
- 保険料:最終合意契約の表明保証条項に係る損害等を補償目的とする表明保証保険の保険料(買い手手配分)
- 廃業費(併用申請時):廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費
FA・M&A仲介費用の成功報酬は、補助事業期間内に専門家との委託契約締結・交渉相手との最終契約書締結・成功報酬の支払いの三点がすべて完了していることが条件となる。補助事業期間外に最終契約書を締結した場合は補助対象外。
委託費のうち補助事業期間内に相見積(原則2者以上)の取得が必要。相見積不要の条件は公募要領別紙に限定列挙されており、それ以外の場合は補助対象経費として認められない。
補助事業期間
2027年1月(下旬予定)から14か月以内を想定。詳細は採択後の交付申請時の手引書で確定される。
審査項目・加点項目
書面審査の着眼点
- 経営資源引継ぎの計画が補助事業期間内に適切に取り組まれるものであること
- 承継者と被承継者の事業にシナジー効果が見込まれること
- 売上高100億円達成に向けた事業計画の実現可能性が認められること
- 財務内容が健全であること
- 買収の目的・必要性
- 買収による効果・地域経済への影響
- 買収実現による成長の見込み(自社の事業環境や外部環境を踏まえること)
加点事由(10項目)
- 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けていること
- 公募申請時に有効な「経営力向上計画」の認定、「経営革新計画」の承認または「先端設備等導入計画」の認定を受けていること
- 公募申請時点で「地域未来牽引企業」であること
- 公募申請時点で小規模事業者等の定義(製造業その他:従業員20人以下、商業・サービス業:5人以下、宿泊業・娯楽業:20人以下)に該当すること
- 公募申請時点で「(連携)事業継続力強化計画」の認定を受けていること
- ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組みを実施していること(えるぼし認定・くるみん認定またはそれに準じる一般事業主行動計画の公表等)
- 公募申請時点で「健康経営優良法人」であること
- 公募申請時点で「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を利用していること
- 賃上げ要件:補助事業完了日を含む事業年度(基準年度)の翌年度の従業員1人当たり給与支給総額が基準年度比2%以上上昇すること、かつ公募申請時に従業員に表明していること(誓約書・表明書の提出が必要)
- 米国の追加関税措置により大きな影響を受けること
賃上げ加点の未達成時の措置
賃上げ加点を受けて採択されたにもかかわらず要件を達成できなかった場合、事業化状況報告において未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁所管の補助金への申請において正当な理由が認められない限り大幅に減点される。災害その他の事業者の責めに帰することができない事由による場合はその限りではない。
申請受付期間
申請受付期間:2026年10月2日(金)〜2026年11月6日(金)17:00(厳守)
締切日時を過ぎた申請は受け付けられない。申請が集中する傾向があることから、不備指摘・修正差戻しを希望する場合は、申請期日の5営業日前(2026年10月29日)までの提出が推奨されている。
情報開示期
2026年9月4日(金)より公募要領が開示されている。
申請代理に関する制約
申請内容の作成を有償で第三者に依頼する場合、行政書士(または行政書士法人)に限られ、行政書士証票および委任契約書の提出が必須となる。行政書士以外が有償で申請作成を行った場合、交付決定取消しとなる可能性がある。