制度概要

中小企業生産性革命推進事業 事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)は、中小企業者等が親族内承継・従業員承継等の事業承継に際して行う設備投資等の経費の一部を補助する制度である。実施機関は事業承継・M&A補助金事務局で、中小企業庁が所管する。本補助事業では、承継予定者が主導する生産性向上に資する取組を支援対象とし、事業再生を伴う承継も対象に含む。業種制限なし(全業種が対象)。

補助額・補助率|最大1,000万円

補助率および補助上限額は、補助対象者の規模と賃上げ要件の充足状況により以下のとおり区分される。

補助対象者の区分賃上げ要件(3%以上)補助上限額補助率
小規模事業者等充足する(表明・達成)1,000万円(800万円超部分は1/2以内)800万円以下部分:2/3以内
充足しない800万円2/3以内
小規模事業者等以外充足する(表明・達成)1,000万円(800万円超部分は1/2以内)800万円以下部分:1/2以内
充足しない800万円1/2以内

補助下限額は100万円(交付申請時に補助対象経費×補助率が100万円を下回る場合は受付不可)。廃業・再チャレンジ枠との併用申請を行う場合、廃業費について補助上限額300万円が上乗せされる(廃業費の補助率は事業費の補助率に従う)。

賃上げ要件の詳細

補助上限額を800万円から1,000万円に引き上げるには、補助事業が完了した日を含む事業年度(基準年度)の翌年度における従業員1人当たり給与支給総額の上昇率が3%以上であることが必要。公募申請時までに全従業員または従業員代表者・役員に対して賃上げを表明することが要件となる。賃上げ達成が確認されなかった場合、補助上限額引き上げ分(最大200万円)の返還を求める。また、事業計画期間中の各事業年度末時点で上昇率の水準を維持できていない場合も、同額の返還を求める。ただし、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求めない。

小規模事業者等の定義

業種分類従業員数
製造業その他20人以下
商業・サービス業(卸売・小売)5人以下
宿泊業・娯楽業20人以下

対象者

日本国内に拠点または居住地を置き、日本国内で事業を営む中小企業者等であること。中小企業者等の定義は以下のとおり。

業種分類資本金または従業員数
製造業その他3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5千万円以下50人以下
サービス業5千万円以下100人以下

ゴム製品製造業(一部除く)は資本金3億円以下または従業員900人以下、ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下または従業員300人以下、旅館業は資本金5千万円以下または従業員200人以下が適用される。個人開業医・農業法人・個人農家も資本金または従業員の基準を満たせば対象に含む。

対象外となる者

  • 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有される法人
  • 直近3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等
  • 大企業が発行済株式の1/2以上を保有する法人(みなし大企業)等
  • 親会社が議決権50%超を有する子会社と親会社(みなし同一法人として一方のみ申請可)
  • 社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、各種組合、法人格のない任意団体

承継予定者の要件

法人の場合、以下のいずれかに該当する者であること。

  • 対象会社の会社法上の役員として3年以上の経験を有する者
  • 対象会社に継続して3年以上雇用され業務に従事した経験を有する者
  • 役員経験と雇用経験を通算3年以上有する者
  • 被承継者の親族(民法第725条に定める六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族)であり、対象会社の代表経験がない者

個人事業主の場合は、個人事業に継続して3年以上雇用され業務に従事した経験を有する者、または被承継者の親族(過去に承継対象事業の代表経験がない者)であること。

事業承継の要件

  • 対象会社は公募申請時点で3期分の決算・申告が完了していること(個人事業主は開業届・青色申告承認申請書提出日から5年以上経過していること)
  • 同一法人内の代表者交代による親族または従業員への事業承継が予定されていること(事業承継後に複数代表となる場合は対象外)
  • 公募申請時点で承継予定者が選定されていること
  • 公募申請日から5年以内(2031年11月5日まで)に事業承継を完了する蓋然性が高いこと(認定経営革新等支援機関の確認書が必要)
  • 経営権と所有権(株式・持分等)のいずれも被承継者から承継者へ譲渡されること

対象とならない事業承継の例

  • 経営権と所有権のいずれもの移転を伴わない代表者交代
  • グループ内の事業再編
  • 物品・不動産等のみを保有する事業の承継
  • フランチャイズ契約または実質的にフランチャイズ契約とみなされる場合
  • 従業員等へののれん分けまたは実質的にのれん分けとみなされる場合
  • 休眠会社や事業の実態がない状態の会社における代表者交代
  • 設立間もない法人における代表者交代等で正当性が確認できない場合

対象経費

補助事業期間内に契約・発注・支払いが完了した経費のうち、補助対象事業の遂行に必要と明確に特定できるものが対象となる。経費区分は以下のとおり。

事業費

  • 設備費:国内の店舗・事務所等の工事費、国内で使用する機械器具等の調達費用
  • 産業財産権等関連経費:特許権等取得に要する弁理士費用(事業費合計額(税抜)の3分の1が上限)
  • 謝金:補助対象事業実施のために依頼した専門家等に支払う経費
  • 旅費:販路開拓等を目的とした国内外出張に係る交通費・宿泊費
  • 外注費:業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費
  • 委託費:業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費(事業費合計額(税抜)の2分の1が上限)

廃業費(廃業・再チャレンジ枠との併用申請時のみ対象)

  • 廃業支援費:廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士費用
  • 在庫廃棄費:既存事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費(売却して対価を得る場合は対象外)
  • 解体費:既存事業廃止に伴う建物・設備等の解体費
  • 原状回復費:借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用
  • リース解約費:リースの解約に伴う解約金・違約金(ファイナンスリース取引の解約金・リース資産の売買に係る費用は対象外)
  • 土壌汚染調査費:土壌の汚染状況を把握するために支払う費用
  • 移転・移設費:効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費

対象外となる経費の例

  • 売上原価に相当すると事務局が判断する経費
  • 事業承継に際して被承継者に支払う譲受費用(土地・資産購入費用等)
  • 補助事業期間外に契約・支払いが行われた経費

補助対象事業の要件

補助事業期間を含む5年間の事業計画において、付加価値額または1人当たりの付加価値額の伸び率が年3%以上向上する生産性向上要件を達成する計画を立案・実施すること(付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費)。

補助対象とならない事業

  • 公序良俗に反する事業
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定される各営業を含む、公的資金の使途として社会通念上不適切と判断される事業
  • 国(独立行政法人を含む)の他の補助金・助成金等を活用する事業(重複申請・重複交付)
  • 補助事業が第一次産業(農業・林業・漁業)である事業

審査項目・加点項目

書面審査の着眼点

  • 取組の目的・必要性:承継予定者による生産性向上等に係る取組が、自社の成長および地域経済等の発展に資するものであること
  • 取組の実現可能性:商品・サービスのコンセプトと具体化手法が明確であること、必要人員の確保に目途が立っていること、販売先等の事業パートナーが明確であること
  • 取組の収益性:ターゲット顧客・市場が明確で、ニーズを的確に捉えており、事業全体の収益性の見通しに妥当性・信頼性があること
  • 取組の継続性:計画通りに進まない場合の対応が考えられていること、実施内容・スケジュールが明確であること、売上・利益計画に妥当性・信頼性があること

加点事由(該当する場合に証明書類の提出が必要)

  • 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けていること
  • 有効期間内の「経営力向上計画」の認定、「経営革新計画」の承認、または「先端設備等導入計画」の認定を受けていること
  • 公募申請時に「地域おこし協力隊」として委嘱を受けており、かつ取組実施地が当該市区町村であること
  • 公募申請時点で「地域未来牽引企業」であること
  • 公募申請時点で「健康経営優良法人」であること
  • 公募申請時点で「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を利用していること
  • 公募申請時点で「(連携)事業継続力強化計画」の認定を受けていること
  • 申請者の代表者(予定を含む)が「アトツギ甲子園」の出場者(地方予選を含む)であること
  • ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組みを実施していること(えるぼし認定・くるみん認定等)
  • 賃上げ加点:基準年度翌年度の従業員1人当たり給与支給総額の上昇率が2%以上となる賃上げを公募申請時までに全従業員等に表明していること
  • 申請締切日時点で中小企業庁「成長加速マッチングサービス」に会員登録・挑戦課題を登録していること
  • 事業承継・引継ぎ支援センターまたは中小企業基盤整備機構地域本部の支援を受け、事業承継計画書を策定していること
  • 米国の追加関税措置により大きな影響を受けること

減点事由

公募申請時点から過去18か月以内に中小企業庁所管の補助金に申請した内容について、賃上げ加点の要件等が未達成の場合、正当な理由が認められない限り大幅に減点される。

申請代理に関する制限

申請内容の作成を有償で第三者に依頼する場合は、行政書士(または行政書士法人)に限られ、行政書士証票・委任契約書の提出が必須となる。

申請受付期間

申請受付期間:2026年10月2日(金)〜 2026年11月6日(金)17:00(厳守)

補助事業期間

2027年1月(下旬予定)から14か月以内を想定。

事業承継対象期間

公募申請受付終了日(2026年11月6日)から5年後の2031年11月5日まで。この期間内に事業承継を完了することが要件となる。

申請期日前の提出推奨

過去公募回の傾向から申請期日直前への集中が予想されるため、事務局による不備指摘・修正差し戻しを希望する場合は、申請期日の5営業日前(2026年10月29日)までの提出が推奨されている。期日間際での申請の場合、不備が解消されない場合は不採択となる可能性がある。

参考:直近公募回の採択実績

  • 15次公募:申請件数551件(事業承継促進枠190件)、採択件数338件(事業承継促進枠115件)
  • 14次公募:申請件数512件(事業承継促進枠169件)、採択件数311件(事業承継促進枠103件)
  • 13次公募:申請件数481件(事業承継促進枠182件)、採択件数293件(事業承継促進枠111件)

出所