この記事のポイント
- 中小企業成長加速化補助金は、売上高100億円超を目指す中小企業の大胆な投資に最大5億円(補助率1/2)を補助する制度。対象は売上高10億円以上100億円未満で、投資額1億円以上。
- 申請の入口は「100億宣言」。申請時点でポータルに宣言が公表されていることが必須で、公表手続きに2〜3週間かかる。
- 3次公募は2026年9月29日受付開始、10月29日15時締切。書面審査のあと、経営者自身によるプレゼン審査(2027年2〜3月)を経て3月下旬に採択。令和7年度補正予算分はこの3次公募で終了見込み。
- 2次公募の採択倍率は約3.9倍。採択企業の中央値は売上高成長率30.5%/年、売上高投資比率54.7%、金融機関確認書の提出率100%。
最大5億円|制度の全体像
| 項目 | 内容 |
|---|
| 目的 | 賃上げへの貢献、輸出による外需獲得、域内の仕入による地域経済への波及効果が大きい、売上高100億円超を目指す中小企業の大胆な投資を支援 |
| 補助上限 | 5億円 |
| 補助率 | 1/2 |
| 対象者 | 売上高100億円を目指す中小企業(売上高10億円以上100億円未満) |
| 要件 | 100億宣言を行っていること、投資額1億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)、一人当たり給与支給総額の年平均上昇率4.5%以上の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画 |
| 事業期間 | 交付決定日から14か月以内〜24か月以内 |
| 対象経費 | 建物費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費 |
| 事務局 | TOPPAN株式会社(中小機構の委託) |
| 審査 | 1次審査(書面)→2次審査(経営者によるプレゼン、外部有識者が評価) |
活用イメージ
| 投資の型 | 内容 |
|---|
| 拠点の新設・増築 | 工場、物流拠点の建設・増築(土地造成を含む付帯工事も対象) |
| イノベーション創出 | 新製品・新工程を実現する設備の導入 |
| 自動化 | ロボット・システムによる革新的な生産性向上 |
入口は100億宣言|宣言の内容と手続き
100億宣言は、中小企業が自ら「売上高100億円」という野心的な目標を掲げ、実現に向けた取組を行うことを宣言・公表するものです。宣言企業は補助金・税制の活用に加え、経営者ネットワークへの参加、ポータルへの掲載ができます。
| 宣言に盛り込む項目 | 内容 |
|---|
| 企業概要 | 足下の売上高、従業員数等 |
| 目標と課題 | 売上高成長目標、期間、プロセス |
| 具体的措置 | 生産体制増強、海外展開、M&A等 |
| 実施体制 | 推進体制 |
| 経営者のコミットメント | 経営者自らのメッセージ |
| 項目 | 内容 |
|---|
| 申請方法 | jGrantsで申請(様式1・様式2) |
| 公表までの期間 | 通常2〜3週間。不備があればさらに時間がかかる |
| 補助金申請との関係 | 補助金の申請時点でポータルに公表されていることが必須 |
| 宣言企業数 | 1次公募締切時1,517件、2次公募締切時3,091件 |
3次公募の締切は10月29日。宣言の公表に2〜3週間かかるため、遅くとも10月上旬までに宣言の申請を済ませておく必要があります。
賃上げ未達なら返還|要件の詳細
賃上げ要件
補助事業が完了した日を含む事業年度(基準年度)と比較して、3事業年度後(最終年度)の従業員(非常勤含む)の一人当たり給与支給総額の年平均上昇率が、全国の直近5年間の最低賃金の年平均上昇率4.5%(基準率)以上であることが必要です。応募申請時に基準率以上の目標を掲げ、交付決定までに従業員等へ表明し、達成します。
| 計算式 | 例 |
|---|
| 年平均上昇率={(最終年度÷基準年度)^(1/3)}−1 | 基準年度500万円→最終年度581万円なら{(581÷500)^(1/3)}−1≒5.1%>基準率4.5% |
目標指標は「従業員の一人当たり給与支給総額」か「従業員の給与支給総額」のどちらかを応募時に選択します(申請後の変更不可)。給与支給総額を選んだ場合でも、一人当たり給与支給総額の年平均上昇率が4.5%以上であることが必要です。
返還となる場合
| ケース | 返還 |
|---|
| 交付決定までに目標を従業員等に表明しなかった | 返還 |
| 基準年度の一人当たり給与支給総額が、応募時の直近事業年度を下回っている | 返還 |
| 応募時に掲げた目標を達成できなかった | 未達成率に応じて返還 |
| 給与支給総額を目標にした場合で、一人当たり給与支給総額の上昇率が4.5%を下回った | 未達成率に応じて返還(両方未達なら未達成率の大きい方) |
天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は除きます。返還となった場合も事業者名は公表されません。審査では補助事業完了後の賃上げに加え、補助事業期間中に実施する「足下の賃上げ」も評価されます。
何に使えるか|補助対象経費
| 経費区分 | 内容 | 条件 |
|---|
| 建物費 | 専ら補助事業に使う事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫等の建設・増築・改修・中古建物の取得 | 単価100万円以上。建物附属設備、付帯工事(土地造成含む)は対象。建物の単なる購入・賃貸、土地代、構築物(門・塀・フェンス・広告塔)、撤去・解体費は対象外 |
| 機械装置費 | 機械装置、工具・器具の購入・製作・借用、一体の改良・修繕・据付・運搬 | 単価100万円以上。構築物・船舶・航空機・車両は対象外。リース会社との共同申請可 |
| ソフトウェア費 | 専用ソフト・情報システムの購入・構築・借用、クラウドサービス利用、一体の改良・修繕 | 単価100万円以上。端末本体、販売目的のソフト構築は対象外 |
| 外注費 | 建物・機械装置・ソフトの取得に必要な加工・設計・検査の一部外注 | 外注費+専門家経費の合計が建物費+機械装置費+ソフトウェア費の合計未満。事業計画作成費、外注先の設備購入、量産品加工の外注は対象外 |
| 専門家経費 | 取得に必要な技術指導・助言の専門家への経費 | 同上。事業計画作成に要する経費は対象外 |
審査で見られること|経営力・波及効果・実現可能性
| 区分 | 審査基準 |
|---|
| 経営力 | ①売上高100億円に向けた中長期ビジョンと計画を持ち、今後5年程度の経営者の明確なシナリオと事業戦略があるか。高い売上高成長率、高い付加価値増加率、収益規模に応じたリスクをとった投資(売上高投資比率)か |
| ②投資で創出した利益を賃金として還元する計画が具体的・妥当・持続的か。足下の賃上げも評価 |
| ③外部環境・内部環境の分析に基づく事業戦略か。市場ニーズの検証(先行投資、事業化可能性調査、テストマーケティング)、競合分析に基づく差別化 |
| ④適切な成果目標と管理体制 |
| ⑤コンソーシアムの場合は連携の意義と相乗効果 |
| 波及効果 | ⑥域内仕入の拡大や地域における価値創造。サプライチェーンを通じた波及、ものづくり高度化・イノベーション、地域資源の活用 |
| ⑦取引適正化、BCP、知財・経済安全保障、女性活躍など地域のモデル企業としての取組 |
| 実現可能性 | ⑧早期に投資を実行できる経営体制 |
| ⑨財務状況(ローカルベンチマークによるスコアリング) |
| ⑩金融機関のコミットメント(与信管理、財務改善、成長資金・増加運転資金の供給姿勢) |
地域未来牽引企業、健康経営優良法人、パートナーシップ構築宣言、事業継続力強化計画、えるぼし、くるみんなどは審査の参考にされます。激甚災害の被災地域の事業には配慮措置があります。
審査員が重視していること
3次公募の概要資料に掲載された審査員の所感を要約すると、次の点が問われています。
- 社長の考えと経験が投資計画に落とし込まれ、社長自身の言葉で質問にぶれずに答えられるか
- 数字の根拠、実現の仕組み、人材確保の手段が同期しているか。「補助金が取れなければ何もしない」計画になっていないか
- 国内市場だけで100億円到達は現実的でなく、輸出やM&Aによる販路拡大、バリューチェーン構築の打ち手があるか
- 市場・競合の解像度が高く、ダウンサイドのリスクも評価されているか
- 単一事業・一回の投資ではなく、成長投資と賃上げを持続できる事業のエコシステムが描かれているか
- 金融機関のコメントがプラス面だけでなく課題面を把握し、経営者と共に解決しようとしているか
- 多少荒削りでも意欲的で不連続な成長につながり、産業や地域に有意義な変化をもたらすか
採択企業の実像|2次公募データ
| 指標(中央値) | 採択者(224者) | 申請全体(872者) |
|---|
| 全社売上高成長率(年平均) | 30.5% | 26.0% |
| 全社付加価値増加率(年平均) | 35.0% | 28.6% |
| 労働生産性成長率(年平均) | 23.7% | 18.0% |
| 売上高投資比率 | 54.7% | 38.5% |
| 最新決算期の売上高 | 21.9億円 | 26.9億円 |
| 補助事業全体に要する経費 | 11.3億円 | 10.3億円 |
| EBITDAマージン | 9.4% | 6.8% |
| 一人当たり給与支給総額の増加率(年平均) | 6.5% | 6.0% |
| 足下の賃上げ(年平均) | 3.0% | 3.0% |
| 自己資本比率 | 43.8% | 34.4% |
| ローカルベンチマーク得点 | 22.3点 | 21.0点 |
| ROA | 5.1% | 3.7% |
採択者の「金融機関による確認書」提出率は100%。1次公募の採択倍率は約6.0倍、2次公募は約3.9倍でした。採択企業は売上高20億円前後で、売上の半分以上に相当する投資を行い、EBITDAマージン・自己資本比率・ROAのいずれも申請全体より高い水準にあります。
いつ出せるか|3次公募スケジュール
| 時期 | 内容 |
|---|
| 2026年9月中旬 | 公募説明会(動画配信) |
| 2026年9月29日 | 3次公募 申請受付開始 |
| 2026年10月29日 15:00 | 3次公募 締切 |
| 2027年1月中旬 | 1次審査結果の通知 |
| 2027年2月15日〜3月5日 | プレゼンテーション審査(申請企業の経営者等が出席) |
| 2027年3月下旬以降 | 採択結果の公表、順次交付決定 |
令和7年度補正予算分は3次公募で終了となる見込みです。令和9年度概算要求では、中小機構運営費交付金6,980億円の中に成長加速化補助金が引き続き位置づけられており、令和9年度分は当初予算成立後の2027年4月以降に公募が始まる見込みです。
大規模成長投資補助金との違い
| 項目 | 中小企業成長加速化補助金 | 大規模成長投資補助金(100億宣言企業向け) | 大規模成長投資補助金(一般企業向け) |
|---|
| 対象者 | 売上高100億円を目指す中小企業 | 中堅・中小・スタートアップ(従業員2,000人以下) | 同左 |
| 補助率 | 1/2 | 1/3 | 1/3 |
| 補助上限 | 5億円 | 50億円 | 50億円 |
| 投資下限 | 1億円 | 15億円 | 20億円 |
| 賃上げ要件 | 一人当たり4.5%以上(全従業員) | 一人当たり4.5%以上(対象事業に関わる従業員) | 一人当たり5.0%以上 |
| 事業期間 | 交付決定から14〜24か月 | 令和10年12月31日まで | 令和10年12月31日まで |
| 100億宣言 | 必須 | 必須 | 不要 |
投資額1〜15億円は成長加速化、15億円以上は大規模成長投資が候補になります。補助率は成長加速化の方が高く(1/2)、大規模成長投資は上限が大きい(50億円)という関係です。
申請前チェックリスト
| 項目 | 確認 |
|---|
| 売上規模 | 直近の売上高が10億円以上100億円未満か |
| 100億宣言 | 10月上旬までに申請し、締切までにポータル公表が間に合うか |
| 投資額 | 専門家経費・外注費を除く補助対象経費で1億円以上か |
| 投資計画書 | 様式1(投資計画書)、様式2(別紙)、ローカルベンチマークを最新様式で作成しているか |
| 5年計画 | 売上高100億円に向けたシナリオ、売上高成長率、付加価値増加率、売上高投資比率の根拠があるか |
| 賃上げ | 一人当たり給与支給総額か給与支給総額かを選び、4.5%以上の目標と足下の賃上げ実績を示せるか |
| 金融機関確認書 | 採択者は100%提出。金融機関に計画を確認してもらい、プレゼン審査への同席も依頼できるか |
| 輸出・M&A | 国内市場だけでない成長の打ち手を計画に入れているか |
| プレゼン | 経営者自身が2027年2〜3月に出席し、自分の言葉で説明できるか |
| 財務 | 自己資本比率、EBITDAマージン、ROAが採択者水準に近いか |
こんな会社は今すぐ検討を
- 売上高20〜50億円で、次の工場・物流拠点・生産ラインへの1〜5億円規模の投資を検討している中小企業
- 輸出やM&Aを含めて売上高100億円までの道筋を経営者自身が語れる企業
- 直近で賃上げを続けており、投資後も一人当たり4.5%以上の賃上げを持続できる収益構造がある企業
- メインバンクが計画を確認し、成長資金の供給に前向きな企業
- 域内の仕入先や地域雇用への波及効果を具体的に示せる企業
100億宣言の公表には2〜3週間かかります。3次公募に出す場合は、10月上旬までに宣言申請を終え、投資計画書と金融機関確認書の準備を並行して進める必要があります。
出典