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「女性が活躍できる環境を整えたいが、何から手をつければ良いか分からない」
「男女間の賃金格差の是正は、企業の社会的責任として重要だと感じている」
こうした課題意識を持つ、先進的な都内中小企業の経営者・人事担当者の皆様に朗報です。
令和7年度から、東京都は男女間賃金格差改善促進奨励金という画期的な新事業を開始します。この制度の最大の特徴は、単なる資金援助にとどまらない点です。専門家による無料コンサルティングを受けながら具体的な改善策を実行し、その取り組みが完了した際に定額で最大100万円が支給される、包括的な支援パッケージとなっています。
本記事では、公式サイトや募集要項の情報に基づき、この新しい奨励金の目的、奨励金額、申請の必須要件、そして活用までの具体的なステップを、分かりやすく解説します。
「男女間賃金格差改善促進奨励金」とは?
この奨励金は、女性従業員の処遇向上や賃金の引き上げを目的とした、男女間の賃金格差改善への取り組みを後押しするために創設されました。
単に奨励金を支給するだけでなく、専門家(社会保険労務士など)を無料で2回派遣し、各社の実情に合わせた課題分析から制度設計までを伴走支援してくれるのが大きな特徴です。これにより、ノウハウがない企業でも安心して、実効性の高い取り組みに着手できます。
奨励金額:取り組み完了で「定額100万円」
本事業で定められた取り組みをすべて完了すると、奨励金として最大で100万円が支給されます。(1事業者1回限り)これは、かかった経費の一部を補填する補助金とは異なり、一連の取り組みを完了したこと自体に対して支払われる定額の奨励金です。
奨励額の内訳は以下の通りです。
- 女性管理職の増加: 30万円
- 役職手当の支給対象となる女性従業員の増加: 30万円
- 非正規従業員でも登用可能な役職の新設: 30万円
- (加算)非正規従業員向けの退職金制度の導入: 10万円
上記の取り組みを複数組み合わせることで、最大100万円の受給が可能です。
対象経費の考え方:奨励金で何がカバーできるのか
この奨励金は定額支給のため、領収書を積み上げて精算する形式ではありません。しかし、支給される100万円は、一連の取り組みで発生する様々なコストに充当することができます。
ご要望の多いキーワードに沿って解説すると、以下のような経費の実質的な負担軽減に繋がります。
- 専門家費:事業で派遣される専門家は無料ですが、より深く人事制度を構築するために自社で別途コンサルタントを依頼した場合の費用。
- 社内研修・説明会費: 全従業員向けに開催が義務付けられている研修や説明会の会場費、資料作成費など。
- 人事制度改定費 等: 新たな役職や手当、退職金制度を導入する際の就業規則改定や、関連するシステムの改修費用など。
奨励金を活用することで、こうした前向きな投資に踏み切りやすくなります。
受給のための必須要件【最重要ポイント】
奨励金を受給するには、以下の4つのアクションをすべて実行する必要があります。これらが本事業の核となります。
① 専門家との改善計画策定
無料で派遣される専門家(全2回)と共に、自社の課題を分析し、具体的な改善計画を策定します。専門家の客観的な視点を取り入れることで、効果的な計画立案が可能です。
② 具体的な改善取組の実施
策定した計画に基づき、「女性管理職の増加」や「非正規向け役職の新設」など、指定された取り組みの中から1つ以上を新たに実施します。
③ 公開用「男女賃金差異」資料を作成・公表
女性活躍推進法に基づき、自社の男女間の賃金の差異に関する情報を算出し、厚生労働省のデータベース等で公表することが必須要件です。
④ 全従業員向け研修の実施
策定した改善計画(一般事業主行動計画)の内容について、全従業員を対象とした社内研修や説明会を実施し、取り組みへの理解と協力を促します。
対象となる企業は?【簡単チェックリスト】
以下の要件をすべて満たす中小企業が対象です。
要件 | チェック |
本社または主たる事業所が東京都内にある | □ |
常時雇用する労働者の数が300人以下である | □ |
取り組みの対象とする部署や職種において、女性の割合が4割を下回っている | □ |
追加で満たすべき要件
- 都内勤務の 雇用保険被保険者を1名以上 雇用している
- 就業規則を労働基準監督署へ届出済み
- 都税の未納や過去5年間の重大な法令違反がない
申請から支給までの全ステップ
本事業は、専門家のサポートを受けながら、計画的に進めていくプロセスが特徴です。
ステップ | 主なアクション |
ステップ1:オンラインセミナー受講 | 財団が主催するオンラインセミナーを受講(申請必須条件)。 |
ステップ2:奨励金の支給申請 | セミナー受講後、取り組む内容を決定し、専用サイトから支給申請。 |
ステップ3:専門家派遣(1回目)と改善計画策定 | 1回目派遣で課題分析・改善計画策定。 |
ステップ4:取り組みの実施(6ヶ月間) | 制度改定・研修実施・賃金差異の公表などを実施。 |
ステップ5:専門家派遣(2回目) | 進捗確認と最終報告に向けた助言を受ける。 |
ステップ6:実績報告と奨励金受給 | 実績報告書を提出し、審査後に定額100万円が支給。 |
まとめ
男女間賃金格差改善促進奨励金は、単なる資金援助ではなく、企業の組織改革を促すための戦略的ツールです。
- 定額100万円の奨励金で、制度改革のコスト負担を軽減。
- 無料の専門家派遣で、実効性の高い計画策定が可能。
- 男女賃金差異の公表を通じて、企業の透明性と社会的評価が向上。
女性が活躍できる環境は、全従業員の働きやすさに繋がり、採用力強化や離職率低下も期待できます。
令和7年度から始まるこの新しい支援事業を積極的に活用し、企業の持続的な成長と、より公平な職場環境の実現を目指してみてはいかがでしょうか。 最新の情報やセミナーの申し込みについては、必ず下記の公式サイトをご確認ください。
- 男女間賃金格差改善促進奨励金 特設サイト:
https://joseikatsuyaku-sokushin.tokyo/- 公益財団法人東京しごと財団: https://www.koyokankyo.shigotozaidan.or.jp/jigyo/kakusakaizen/kakusakaizen.html