GXサプライチェーン構築支援事業は、水電解装置、燃料電池、ペロブスカイト太陽電池、浮体式等洋上風力発電設備、HVDCケーブルなどの国内製造サプライチェーンを構築する大規模設備投資を支援する経済産業省の補助金です。

補助率は原則として大企業1/3以内・中小企業等1/2以内で、野心的な取組は最大で大企業1/2以内・中小企業等2/3以内。補助限度額は設定されていません。ただし、一般的な省エネ設備や再エネ設備の導入を幅広く支援する制度ではなく、対象製品、製造能力、生産開始時期、国内供給、GXへの取組などの要件を満たす必要があります。

2026年8月22日時点の結論
  • 公募状況:公表済みの令和6年度、令和7年度、令和7年度補正の募集は終了。次回公募は未定
  • 対象:特定のGX製品・部材を国内で製造するための設備投資。単なる導入・利用は原則対象外
  • 補助率:原則1/3または1/2、要件を満たす場合は最大1/2または2/3
  • 採択実績:一次情報で現在確認できるのは20案件。応募件数が非公表のため採択率は算定不能
  • 最新変更:2026年8月19日、令和7年度事業Ⅳでチカモチ純薬株式会社の採択が取り消され、同区分の現行採択者は三星ダイヤモンド工業株式会社1社

GXサプライチェーン構築支援事業とは

本事業の目的は、2050年カーボンニュートラルの実現と産業競争力の強化に向け、日本企業が強みを持つGX分野の製造基盤を国内に形成することです。経済産業省は、世界で競争できる大規模投資や、国内生産が限定的な部素材・固有技術を持つ製造事業者等を支援対象として位置付けています。

図解|補助事業のスキーム
経済産業省
政策・予算
補助事業者
執行団体
間接補助事業者
国内の製造事業者等
原則1/3・1/2、最大1/2・2/3
出典:令和7年度補正「GXサプライチェーン構築支援事業」公募要領の事業スキームを基に作成

国から直接補助されるのではなく、国が補助事業者(執行団体)へ定額補助し、執行団体が採択企業へ間接補助金を交付する仕組みです。申請企業は、採択後の交付申請を経て交付決定を受けた段階で「間接補助事業者」となります。

最新の公募状況と予算規模

事業年度国庫債務負担を含む総額主な公募対象2026年8月22日時点
令和6年度4,212億円水電解装置、燃料電池、ペロブスカイト太陽電池、浮体式等洋上風力終了/採択16案件
令和7年度約1,437.5億円HVDCケーブル、水電解装置・燃料電池、浮体式等洋上風力、ペロブスカイト太陽電池終了/現行公表3案件
令和7年度補正約833億円浮体式等洋上風力、ペロブスカイト太陽電池(フィルム型・タンデム型)終了/浮体式1案件、ペロブスカイトは結果公表待ち
注:各総額は複数年度の国庫債務負担を含む事業規模。単年度の予算額とは異なります。
図解|各期の事業総額
令和6年度4,212億円
令和7年度約1,437.5億円
令和7年度補正約833億円
予算の読み方に注意:令和8年度当初予算の「497億円」や令和7年度補正の「55億円」は単年度予算の表示です。一方、上図は将来年度の支出約束を含む事業総額です。497億円を新しい独立公募枠として上図に加算することはできません。
出典:経済産業省および各年度GXSC補助金事務局の公表値を基に作成

令和8年度当初予算には本事業として497億円が計上されていますが、2026年8月22日時点で新たな申請公募は確認できません。予算計上と新規公募の開始は同義ではないため、次回の対象品目・補助率・募集時期は公式発表を待つ必要があります。

補助対象となる製品・分野

図解|これまでに公募された5分野
水電解装置
完成品、膜、電極、触媒、CCM、MEA等
燃料電池
完成品、膜、触媒、ガス拡散層、アイオノマー等
ペロブスカイト太陽電池
フィルム型、タンデム型、対象となる製造装置等
浮体式等洋上風力
ブレード、ナセル、タワー、浮体基礎、係留設備等
HVDCケーブル
高圧直流送電ケーブルの国内製造設備
出典:経済産業省GXサプライチェーン構築支援事業ページ、令和6年度・令和7年度・令和7年度補正の各公募要領を基に作成。対象品目は公募回ごとに異なります。

重要なのは、上記製品を購入・導入する事業ではなく、国内で製造するための設備投資が対象である点です。例えば、太陽光発電設備を自社工場の屋根に設置するだけでは、本事業の対象にはなりません。

また、同じ分野でも公募回によって対象範囲が変わります。令和7年度補正の浮体式等洋上風力では、従来のブレード、タワー、ナセル等に加え、軸受、発電機、増速機、制御装置、電力変換装置、ハブなどが対象品目に明記されました。一方、部材の一部だけでは対象外となる品目もあります。

対象者と主要要件

  • 日本国内で登記された法人で、国内に事業実施場所を持つこと
  • 対象製品を製造する工場で設備投資を行うこと
  • 設備機械装置の購入または改造を伴うこと
  • 事業を遂行できる組織、人員、資金力、管理能力を有すること
  • 公募要領に定める年間製造能力と生産開始年限を達成すること
  • 原則として事業終了後5年間以上、対象製品の生産を継続すること
  • Scope1・Scope2の排出削減目標、実績報告、公表等のGX要件に対応すること
  • 代表権を有する者が第三者委員会の対面面接に参加できること

中小企業も対象ですが、一般的な設備投資補助金より要件は大幅に厳格です。令和7年度補正では、浮体式洋上風力の年間製造能力について、ブレード・ナセル等100基分、タワー30基分、浮体基礎20基分などの最低水準が設定されました。ペロブスカイト太陽電池も、フィルム型300MW/年、タンデム型500MW/年の新規製造能力などが求められています。

「中小企業も対象」の意味
会社規模だけで応募可否が決まる制度ではありません。対象製品への該当性、製造能力、需要家との連携、国際競争力、資金調達力を満たせるかが先に問われます。部素材メーカーは、完成品への採用見込みやサプライチェーン上の不可欠性を具体的に示す必要があります。

補助対象経費と対象外経費

区分対象となる主な経費
設計費対象機械装置、建物、建築材料、システム等の設計費
建物等取得費対象事業に必要な工場の新設、建て替え、リフォーム等
設備費機械装置の購入・製造・改造、据付け、必要な附帯工事等
システム整備費補助対象設備の稼働に直接必要なソフトウェアの購入・作成・改修等

主な対象外経費は、土地・オフィス用建物、外構工事、環境アセスメント等の調査費、既存建物・設備の撤去費や移設費、家賃、通信費、消費税、公租公課、保険料、借入利息、汎用パソコン・プリンター、価格の適正性が不明な中古品、予備品などです。応募申請書の作成費も対象になりません。

詳しくは「GXサプライチェーン補助金の対象経費・対象外経費」も参照してください。

補助率と「限度額なし」の正しい意味

企業区分原則野心的な取組と認められる場合
大企業1/3以内1/2以内
中小企業等1/2以内2/3以内

令和7年度補正の公募要領では、補助率を引き上げる要件として、①商用目的の生産設備が国内に存在しないこと、②市場投入の時期・量・性能等で国際競争力を十分に有すること、の双方が示されています。過年度公募では要件の書き方が異なるため、次回公募では必ず当該回の最新版を確認してください。

「限度額なし」は、1申請当たりの一律上限が設定されていないという意味です。審査なしに必要額が交付されるわけではなく、対象経費の査定、補助率、事業予算、交付決定額が実質的な上限になります。審査の結果、申請した補助率を下回る場合もあります。

審査で確認される6つのポイント

  1. 基本要件・経営層のコミット:経営戦略の中核に位置付け、経営者が継続的に資源投入できるか
  2. 事業の実現性:設備内容、投資額、スケジュール、リスク対応が妥当か
  3. 産業競争力への貢献:独自性、需要家の巻き込み、原材料確保、知財・標準化戦略、自立化シナリオがあるか
  4. 排出削減への貢献:製造する製品の利用により国内CO2排出削減が見込めるか
  5. 政策支援の必要性:補助なしではIRRや投資回収期間が自社の投資判断水準に達しない一方、技術・事業革新性があるか
  6. 人材確保:賃上げ等により必要人材を確保できるか。賃上げ表明等は加点対象

審査は書面と面接の二段階で、面接には代表権を有する者の対面参加が必須です。単に「成長市場だから投資したい」と説明するだけでは不十分で、補助なしでは投資判断が困難である理由と、補助により政策目標を実現できる根拠を同時に示す必要があります。

詳しくは「GXサプライチェーン補助金の審査・面接対策」で解説しています。

申請から補助金受領までの流れ

図解|申請から入金まで
1. 事前確認
対象製品・能力・経費
2. ID取得
GビズIDプライム等
3. 計画策定
市場・投資・CO2・資金
4. 応募申請
jGrantsで提出
5. 審査
書面・代表者面接
6. 採択
採択は交付確定ではない
7. 交付決定
原則ここから発注可能
8. 事業実施
発注・取得・支払
9. 実績報告・入金
検査・額確定後に精算払
出典:令和7年度補正公募要領およびGXSC補助金事務局FAQを基に作成
最重要注意点:採択だけでは発注できません。原則として交付決定前の契約・発注・支出は補助対象外で、発注先への内示も発注行為とみなされます。事前着手届出が受理された場合も、採択や交付を保証するものではありません。

補助金は原則として事業完了・実績報告・額の確定後の精算払いです。概算払いが認められる場合はありますが、これを前提とした投資計画は認められていません。大型案件では数年分の設備代金や建設費を先行して支払うため、自己資金・融資・つなぎ資金を早期に確保する必要があります。

採択実績:公表済み20案件、採択率は算定不能

2026年8月22日時点で、各年度の公式採択資料から確認できる現行案件は20件です。公表資料に記載された補助金上限額または交付申請額の合計は約2,740.1億円です。ただし、これは実際の支払額ではありません。

主な採択事業者製品・事業公表額
積水化学工業株式会社フィルム型ペロブスカイト太陽電池約1,572.5億円
古河電気工業株式会社HVDCケーブル約306.6億円
東レ株式会社水電解装置用電解質膜約186.7億円
本田技研工業株式会社燃料電池・燃料電池システム約147.8億円
旭化成株式会社電解セル・電解用膜約114.3億円
トヨタ自動車株式会社燃料電池スタック・モジュール約112.5億円
株式会社大島造船所浮体基礎約44.2億円
JFEエンジニアリング株式会社浮体式基礎製造設備約43.4億円
注:令和6年度は「補助金交付額」、令和7年度以降は「補助金交付申請額」等、資料ごとに定義が異なります。いずれも上限であり、実際の交付額と異なる場合があります。

応募件数は公式資料で公表されていないため、採択率を正確に算定することはできません。「採択件数÷公表案件数」のような計算は採択率ではない点に注意が必要です。全案件は「GXサプライチェーン補助金の採択実績一覧」で確認できます。

最新の採択取消:令和7年度事業Ⅳでは、2026年8月19日に事務局が採択条件に基づきチカモチ純薬株式会社の採択を取り消しました。古い採択一覧や二次情報では2社と記載されている場合がありますが、現在の公式資料は三星ダイヤモンド工業株式会社1社です。

次回公募に向けて今から準備すべきこと

  1. 対象製品の該当性を確認する:完成品、主要部品、部素材、製造設備のどこに該当するかを整理する
  2. 需要家と製造能力を固める:販売先、採用見込み、最低生産能力、生産開始年限の根拠を準備する
  3. 補助の必要性を定量化する:補助なし・補助ありのIRR、投資回収期間、資金調達計画を比較する
  4. GX・競争力の根拠を作る:CO2削減量、海外競合、性能、価格、原材料、知財・標準化戦略を数値化する
  5. 実行体制を整える:代表者面接、経理、調達、証憑管理、年度別工程、事業後5年間の生産継続まで担当を決める

本事業は公募期間が短い一方、投資規模と提出資料が大きいため、公募開始後にゼロから準備するのは現実的ではありません。設備仕様、立地、需要家との協議、見積、資金調達、CO2削減効果、代表者説明資料まで事前に進めておく必要があります。

よくある質問

Q. 次回公募はいつですか?

2026年8月22日時点では未定です。令和8年度当初予算に497億円が計上されていますが、新規公募の開始を意味するものではありません。

Q. 補助上限は本当にありませんか?

令和7年度補正公募要領では「限度額なし」とされています。ただし、補助対象経費、補助率、予算、審査結果、交付決定額が実質的な上限です。

Q. 中小企業でも申請できますか?

申請できます。過去には片岡製作所、ナロック、三星ダイヤモンド工業などの採択実績があります。ただし、製造能力や国際競争力等の要件は企業規模にかかわらず厳格です。

Q. 省エネ設備や太陽光発電設備の導入に使えますか?

原則として使えません。本事業は対象GX製品を国内で製造するための設備投資を支援する制度です。設備の利用・導入支援とは別制度です。

Q. 採択前や交付決定前に発注できますか?

原則できません。事前着手届出が受理された場合に例外となる可能性はありますが、採択・交付を保証するものではなく、不採択時は全額自己負担です。

Q. 採択率は何%ですか?

算定できません。採択件数は公表されていますが、応募件数が公表されていないためです。

まとめ

GXサプライチェーン構築支援事業は、最大2/3・限度額なしという大型支援である一方、対象は特定GX製品の国内製造投資に限られます。採択の中心は、政策上不可欠な製品について、世界水準の製造能力、需要家、技術優位性、補助の必要性、資金力を一体で示せる案件です。

2026年8月22日時点で公表済みの募集は終了しています。次回公募を検討する企業は、対象該当性の確認、需要家との協議、設備仕様・見積、IRR、CO2削減効果、資金調達を先行して準備してください。

GX製造投資の対象可否を確認したい方へ

対象製品、投資規模、製造能力、採択可能性を一次情報に基づき整理します。

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一次情報・参考資料

※本記事は2026年8月22日時点の一次情報に基づき作成しています。次回公募では対象品目、補助率、要件、期限が変更される可能性があるため、申請時は最新版の公募要領を確認してください。

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