「ものづくり補助金の政策効果がないのでは?」との以下ニュースが日経新聞にて、掲載されました。(2020/11)

経済産業研究所(RIETI)が6月にまとめた報告書が話題になっている。長年にわたり補正予算で巨額を計上してきた中小企業向けの「ものづくり補助金」について「政策効果があるとは言い切れない」と指摘したのだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66089820R11C20A1EE8000/

経済産業研究所(RIETI)とは独立行政法人であり、統計解析を使いながら、各種制度の効果の検証を担っている機関です。

今回も経済産業省から依頼を受け、経済産業研究所(RIETI)がものづくり補助金の効果を分析・公表をしています。
調査結果はこちら
(2020/6リリース)

この調査結果を見ると、統計解析のプロが、厳密に調査を行っている事が分かります。

ちなみに、ものづくり補助金は、中小企業の生産性向上ために作られた制度であり、具体的なKPIを、付加価値額(営業利益、人件費、減価償却)としています。

そのKPIに関連する要素について、以下の調査結果が出ています。

ものづくり補助金の効果調査結果サマリー

付加価値額について
付加価値額の補助⾦採択前年から 3 年間の年平均伸び率に関しては、点推定値では採択事業者が⾮採択事業者よりも 5.22%低かったが、統計的に有意でなく(95%信頼区間:−16.73 〜 6.28)、正負を問わず効果の存在が認められなかった。

従業者数について
従業者数の補助⾦採択前年から 3 年間の平均伸び率に関しては、点推定値では採択事業者が⾮採択事業者よりも 0.38%⾼かったが、統計的に有意でなく(95%信頼区間:−0.40〜1.16)、正負を問わず効果の存在が認められなかった

従業者⼀⼈当たり付加価値額
⽣産性の指標として⽤いられている従業者⼀⼈当たり付加価値額の補助⾦採択前年から3 年間の平均伸び率に関しては、点推定値では採択事業者が⾮採択事業者よりも 4.02%低かったが、統計的に有意でなく(95%信頼区間:−17.12〜9.09)、正負を問わず効果の存在が認められなかった。

別方法での調査結果
3 年間の従業者数の平均伸び率に関しては、採択事業者が⾮採択事業者よりも有意に⾼かった
(点推定値 1.69; 95%信頼区間:0.01〜3.37)。それ以外のアウトカム変数については有意な結果は得られなかった。

以上の通り、ものづくり補助金の効果について調査したけど「明確な効果が見えなかったが、従業者数の増加には寄与しているともいえる」、と言う結論となっています。

ものづくり補助金は、2012年頃より開始した制度であり、1社あたりの補助額1000万円程度と大きく、その予算額も毎年1000億単位で充てられてきました。

このため、目標と言える付加価値(営業利益・人件費・減価償却)向上の効果がないとすると、施策としては、費用対効果が良くなかったと言えてしまいます。

なぜ調査されたのか?

ものづくり補助金の効果が調査された背景としては、以下2点の目的を経済産業省が公表をしています。

①景気変動等バックグラウンドの影響を排除した、事業の真の効果を把握したい。
②事業を行うに当たって、どういった事業タイプへの支援がより効果的かを明らかにしたい。

https://www.rieti.go.jp/jp/events/18121401/pdf/4-3_miura.pdf

下記図で言う、「非採択企業と採択企業との間に、明確な効果の違い」がある事を推定し、ジャンプ部分を確認すると言う、非常に有意義な調査だと思います。

目的は施策の効果(ジャンプ)を測る事

今後の中小企業施策の方向性

ものづくり補助金は中小企業施策の目玉の一つでしたが、2020年の第三次補正予算が組まれるこのタイミングで、日経新聞が、2020年6月公表の調査結果を公表している事から、今後の、中小企業施策に影響を与えるのではと思います。

ものづくり補助金は、すぐになくなる事はないと思いますが、付加価値向上の義務化予算減少などが考えられます。

また、それでは、今後どのような施策に予算が振られるのか?と言うと以下だと思われます。

  • 非対面化ビジネスモデルへの転換
    非対面化ビジネスモデルへの転換は、テイクアウト、通販など、対面での売り上げを伴わないようなモデルへの転換であり、国の施策では、小規模事業者持続化補助金やIT補助金が該当します。
  • 感染症対策
    感染症対策は、換気やアルコール消毒・アクリル板の設置などの取り組みであり、小規模事業者持続化補助金やIT補助金などの事業再開枠部分が該当します。
  • 事業再編(事業引継ぎ・M&A・事業再生)
    持続化給付金や家賃支援給付金が継続しない限り、今後の廃業は防ぎきれないでしょう。
    このため、できるだけ廃業ではなく、引き継ぎを行うような施策が強化される事になります。

    経営資源引き継ぎ補助金や再生支援協議会関連の再生、M&Aによる売却税などの減税が該当します。

以上のように、中小企業施策の変動の節目にきているのかもしれません。